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『撮った…?』
「撮った」
『ヤダヤダ消して
絶対変な顔してたー!』
「やなこった」
イタズラが成功した子供のように笑う竜胆くんは、ケータイを持った手を高く上に上げた。
『ちょっと!』
グッと背伸びをして手を伸ばすがもちろん届かない。
「あぶねぇって」
伸ばしていない方の手はお互い繋いだまま。
背伸びを辞めさせようと、その手を竜胆くんが下に引っ張った為にグラついた体。
わっ。と竜胆くんに飛び込む形になってしまったがヨロけることなく、おっと。と支えられる。
「な?だから危ねぇつったろ?」
大丈夫か?と間近から降ってくる声は優しくて、この状況を理解して顔に熱が集まった。
『ご、ごめん!大丈…夫』
顔を上げれば、見下ろしていた彼の顔が思ってたより近くにあって、同時に驚いたように目を見開く。
イルミネーションの光が映ったレンズ越しに見える大きく開かれた紫色の瞳にもキラキラと光が反射して、彼の後ろでも光っている光が、金色と水色の髪をさらに明るく見せていた。
私がヨロけたときに腰に回った、ケータイを持つ彼の腕に少し力が入る。
距離なんてほとんど0な状態だが、半歩前に進まされて完全に0となった。
頬に当たる竜胆くんの胸は、コート越しにもわかるほど暖かくて、体温が高いんだな。となぜか冷静な自分がいた。
なぜ抱きしめられているのか、いつまでこのままなのか、この場合私も腕を回した方がいいのか。考えが次々によぎっては消えていく。
『……あ、あの…』
何かを言おうとしたとかじゃないが、何かを言わなければ。と思い声をかけた瞬間に勢いよく体を離した竜胆くんはバツが悪そうに、わりぃ。と小さく呟いた。
口元に手の甲を当てて、左の下の方を見たまま。
『ぇ、あ、ううん、大丈夫
私こそごめん、もたれ掛かっちゃって…
その、ありがとう…支えてくれて』
竜胆くんのその様子に今更ながら恥ずかしさが出てきて、胸元で自分の手を握りしめた。
いや。とこれまた小さく返ってきた返事。
「………そろそろ、帰るか」
『…だね』
先ほどまでとは違い、人1人分開けて無言で横を歩く。
気まずい雰囲気だが、何を話せばいいのかもわからない。
機嫌を損ねたわけではないとは思う。
そうだったらきっと置いていかれてる気がするから。
こうして歩幅も合わせてくれているから、きっとそうではない。
多分私と同じで、少し気まずいだけだ。
多分。
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gxh - 玉兎さまーーっ!!大好きです!更新いつまででも待ってます! (2月2日 20時) (レス) @page42 id: 9d014a95bc (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - キクラゲさん» コメントありがとうございます!✨ 告白ですね!!気持ち届きました!!そんな好き好き言ってもらえると調子に乗ってしまいそうです😂😂 楽しんでいただける作品を作ります!!これからもよろしくお願いします☺️ (12月12日 14時) (レス) id: 7c28fb7f1c (このIDを非表示/違反報告)
キクラゲ(プロフ) - クッッッッソ好きです作者さんの作品も好きだし作者さんも好きでs(( ンンッ…私こんなに語彙力ないからうまくかけないので玉兎さんの作品見て語彙力勉強します…!コメント失礼しました! (12月12日 0時) (レス) id: bf82bf2975 (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 鈴さん» コメントありがとうございます!!✨慎重に書き進めております!!鈴様の応援でめちゃくちゃがんばれます!!ありがとうございます☺️ (12月10日 12時) (レス) id: 7c28fb7f1c (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 二人の関係がどうなっていくのか、気になります!続き楽しみにしてます! (12月9日 13時) (レス) id: 87ee7e2daf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉兎 | 作成日時:2023年10月24日 11時