25 ページ25
買ったターキーを屋台の近くにあるベンチに座って食べる竜胆くんの横に腰掛ける。
前を通っていく人たちを観察して、空を見上げて息を吐いた。
ビルに囲まれて狭い空に、明るすぎる空間で星は見えない。
ただ、ぽっかりと開いた穴のようで吸い込まれそうな思いになる。
「ん」
『ん?』
聞こえた声に見上げていた顔を戻して横を向けば、差し出される食べかけのターキー。
『え?』
「俺違うの買ってくるから食っていいよ
いらねぇなら捨てて」
ずいっと押し出されるそれをつい受け取ってしまう。
その時に指先が触れて、竜胆くんがパッと手を離した。
『わっ、あぶな』
キャッチして落とさずに済んだターキーを見つめる。
竜胆くんは早足に屋台の方へ行ってしまった。
1/3くらい残ってるそれ。
捨てるにはもったいない量だが、食べれば間接キスになる。
少し悩んだが、先ほどから僅かに空腹を訴えるお腹に我慢できずに、まだ口のつけられていない部分を遠慮ぎみに齧った。
『美味しい…』
小さい頃夏のお祭りでパパがリンゴ飴や綿菓子を買ってくれたのを思い出す。
きっと家で食べれば美味しさは半減するだろう不思議な効果が屋台にはあると思う。
むしゃむしゃと夢中で食べていた私の視界に、見慣れたスニーカーが入り込み、ふはっと頭上から笑い声が降ってきた。
ターキーに齧り付いたまま見上げれば、スープ系の入っていそうな器を二つ持った竜胆くんが肩を揺らしている。
「美味いよなそれ」
笑いながら隣に座った竜胆くんに、ハッと我に返ってターキーを見ればほぼ骨になっていた。
『ぁ、ごめん美味しくてつい』
「いいよ、お前にあげたやつだから
あとこれポトフ」
『え、私の?』
「ん
手冷たかったから寒ぃのかと思って」
ナチュラルに骨を取られて、代わりに持たされた器はじんわりと手を温めてくれる。
『ありがとう
でも私竜胆くんの上着借りてるのに』
「俺は鍛えてるから平気」
そんなものなのだろうか。
寒いのは寒いのでは?
と思うが、きっと何を言っても平気と言われそうで、ありがとう。ともう一度告げた。
横で大きめに切られた野菜を食べる竜胆くんは、スープで流し込んでふぅ。と息を吐いた。
「俺冬の外で食うコンビニのおでんが1番美味いと思ってたけど
1番屋台のポトフかもしれねぇ」
『寒いんじゃん』
「そりゃ暑くはねぇよ」
269人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
gxh - 玉兎さまーーっ!!大好きです!更新いつまででも待ってます! (2月2日 20時) (レス) @page42 id: 9d014a95bc (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - キクラゲさん» コメントありがとうございます!✨ 告白ですね!!気持ち届きました!!そんな好き好き言ってもらえると調子に乗ってしまいそうです😂😂 楽しんでいただける作品を作ります!!これからもよろしくお願いします☺️ (12月12日 14時) (レス) id: 7c28fb7f1c (このIDを非表示/違反報告)
キクラゲ(プロフ) - クッッッッソ好きです作者さんの作品も好きだし作者さんも好きでs(( ンンッ…私こんなに語彙力ないからうまくかけないので玉兎さんの作品見て語彙力勉強します…!コメント失礼しました! (12月12日 0時) (レス) id: bf82bf2975 (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 鈴さん» コメントありがとうございます!!✨慎重に書き進めております!!鈴様の応援でめちゃくちゃがんばれます!!ありがとうございます☺️ (12月10日 12時) (レス) id: 7c28fb7f1c (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 二人の関係がどうなっていくのか、気になります!続き楽しみにしてます! (12月9日 13時) (レス) id: 87ee7e2daf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉兎 | 作成日時:2023年10月24日 11時