再会する ページ25
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思い出は思い出でとっておいた方がいい事もある。
元カノから久しぶりに連絡があって
結構長いこと付き合ってた子やったから会ったらまたより戻すかも、なんて思って会えば
あれ?こんな話合わへんかったっけ?ってなったり
貧乏な時に通ってた激安激ウマな居酒屋も
懐かしくて入ってみたらそんなことなかったり
AちゃんのLINEはそんなこんなで
結局追加出来ずにいた。
「森ノ宮久しぶりやな〜」
移動する前の楽屋でモリシが独り言のように話しかけてくる。
今日はNGKの合間に森ノ宮のネタライブ。
企画物やないからAちゃんはおらんと思うけど何日か前から少しだけソワソワしている。
「森ノ宮いいよな」
「なんか、あのくらいの劇場が一番お客さんの熱量わかる気いするな」
モリシも俺も東京に出て大きな会場で舞台に立てど、どことなく安心するのはマンゲキや森ノ宮。
準備して森ノ宮までマネージャーと移動する。
会えるはずはない。
今まで森ノ宮で会った事ないんやから。
車の中でAちゃんのLINEの画面をボーっと眺めた。
…
「どうも、見取り図です〜!」
森ノ宮でのネタライブ。
土曜日という事もあり満席御礼。
袖から出ると待ってましたというくらいの大きな拍手に包まれた。
最前列はやっぱりいつもの女の子達。いつもどうやってチケット取るんか知らんけどありがとうございます。
今日は年配多そう、家族も結構おるな、なんて立った瞬間に思えるくらい意外と余裕がある。
でもそんな脳内が一瞬にして真っ白になった。
1番奥の扉の前に立つスタッフの横にいる女性。
…Aちゃん。
絶対Aちゃんや。
すると客席の子供がいきなりギャン泣きし始めて
俺はハッと意識を戻す。
「あらあ、泣いちゃった」
「…いきなり髭で長髪の巨漢男が出てきたら泣いてまうって。一回帰らすな〜ごめんな〜。」
「俺も泣くぞオイ!」
一瞬なんのネタするんやっけって思ってしまったから、アドリブを挟んでくれたモリシとまだ泣いてる子供に感謝。
ちらっとみたら、Aちゃんも肩が揺れてて笑っているようだった。
Aちゃん、俺、めっちゃ売れたよ
この前なんて単独も完売で
レギュラー番組もたくさんあるし
今度は企画で海外まで行くんやで、すごいやろ。
なのに
Aちゃんが言ったんよ、東京で一緒に仕事しようって。
俺はこんなに笑ってもらえる芸人になれたと
Aちゃんに見せつけるようにネタをした。
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作者名:ぴぴ | 作成日時:2023年3月13日 14時