散る ページ23
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モチを食い過ぎて太ったモリシと正月早々ネタ合わせ。やっぱり大阪に戻るといきなり芸人を目指しているという焦りは復活した。
養成所生活も卒業まであと少し。
最後は卒業ライブがある。
その後、本格的に芸人として劇場のランキング制のネタバトルに参加する。
売れてもないのに忙しく
目まぐるしく日々は過ぎていく。
モリシとも死ぬほど言い合いになったし
芸人を辞めようとした時もあったけど…
「なるほど、それで下積みを経て、M-1決勝の常連になって、露出が増えていったんですね」
綺麗なお姉さんが俺とモリシの前に座る。
ボイスレコーダーとさらさらと言葉の断片を書いていくノート。
すぐ雑談ばかりになるインタビューを後から聞き返して文字に起こすの大変そうやなあといつも思う。
「めっちゃ話した気がしますけど、そんなページもらえるんすか？」
「もちろん、巻頭26ページの特集ですから」
見取り図は売れた。
26ページの特集が組まれるほど。
養成所の時でさえ忙しいと思っていた自分からは想像もできないほどに今が一番忙しい。
収録、劇場、劇場、収録、劇場。
それ以外は移動してるだけ。
休みなんて知らされてない限り目処は立たない生活。
こういうインタビューとか、たまにあるお笑いを求められてない仕事の時に「ほんまに売れてるんや」と俯瞰で思ってしまう。
「ではリリーさんのパートはこれで最後なんですけど…」
「リリーさんが解散すら考えたのに今も続けている理由ってなんでしょう？」
横で「俺がいるからやんな」とちょけるモリシ。
「女の子が好きでモテたいからっすかね」
そう言ってインタビューのお姉さんの目を見てニコッと笑ってみた。
「あ、そ、そうですか」と目を逸らした顔は少し赤らんでいた。後で連絡先聞けるかなあと思ってほくそ笑む。今日の今日まで清水将企、リリーはこういう感じで生きてきた。
「またお前は！特集無くなったらお前がなんかしたって思てええ？？なあ」
モリシもこういう感じ。
今がきっと一番意思疎通が出来てやりやすい。
モリシもそう思ってくれてるだろう。
昨日のロケで桜が咲いていて
Aちゃんの事を思い出した。
今日みたいな昔話なんてすれば鮮明に嫌でも思い出す。
東京に出てきていろんな番組に呼んでもらえど、Aちゃんはどの番組にも携わっていなかった。
もう、俺が会えないくらい偉くなってる？
Aちゃんが東京に行ってから何年も経った今
その何年間は俺からしたらあっという間やったけど
現実的に見たら相当時間が掛かってしまったんやなと思った。
昨日満開だった桜がもう散り散りになっているように。
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作者名：ぴぴ | 作成日時：2023年3月13日 14時
