桜の季節 (ページ20)

今日:14 hit、昨日:3 hit、合計:19,176 hit

目に見えるページ20

.

公園のベンチに座って、Aちゃんはビールのプルタブを開けた。俺も買えばよかったと思ってたら

「飲む？」

と、差し出される、Aちゃんが飲んでた缶。

「…もう、浴びるほど飲んだから」

なんでAちゃんはこうも意識させるのが上手いんやろう。
回し飲みなんて誰でもするけど、俺以外にもそういう事するんやろなと思うとチクリと胸が痛む。

「あ、そやリリーくんはアイス」

コンビニ袋からガサガサ取り出して渡される。

「あざっす」

「いいね、なんか、夜風も気持ちいいし」

Aちゃんはビールを口にしてから、俺をじっと見て

「…今日は面白い漫才も見れたし言うことないわ」

と笑った。

「あ、漫才、俺らのどうやった？」

「面白かったよ！笑っちゃった」

「ほんま？」

「ほんま」

俺と同じくらい、嬉しそうな表情のAちゃん。
彼女のために漫才をしてる訳じゃ無い
けど、彼女が笑うのはやっぱり俺の中で特別だ。

「リリーくんはかっこいいね」

ぼそりとつぶやく、Aちゃん

「な、何？急に」

「思っただけ。飄々としてんのに意外と努力家で、ちゃんと結果出すし。
こんな短い期間で沢山知れてよかったわ」

照れてしまうくらい素直に嬉しい言葉と
引っかかる最後の言葉。

待って。

なんで過去形になった？最後。

よくない続きが目に見える。

「私、東京行くんよ、来月から」

Aちゃんは、寂しそうに笑った。

.