蹴る ページ16
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夏が近づいてくるのが分かる、6月末。
現役生ネタライブの当日。
baseよしもとが会場になっていて、俺もこの劇場でライブを観に行った事がある。
普段テレビで見る芸人が出てる場所で漫才が出来るのは楽しみやけど
「噛まへんって大丈夫」
「うるさい、そればっか言うから噛むんや俺は」
モリシが何度も気を遣って言うように
俺は前回の事もあり緊張していた。
「鎌鼬さんMCやって。すごいよなあ」
モリシは楽観的。ネタ作る時は俺にとやかく言われるとめちゃくちゃ弱るくせに、本番となると違うらしい。
すると同期が溜まる楽屋がよりうるさくなった。
「差し入れー！！みんな頑張ってな」
女神か、もしくは動物園の飼育員かなんか？
楽屋中の同期がわさっと、入ってきたAちゃんに群がった。
Aちゃんは箱アイスを沢山持っていて、一人一人に配ってた。
「あ、友保、結構力入ってるらしいやん〜」
「ほんまうるさい姉ちゃんやな、あ、これウマイな」
「中村くん、相方早口な時あるからペースは中村くんが舵とってね」
「Aさ〜ん、、頑張ります」
小さなチョコバーを渡す度
一人一人に一言投げかける。
ていうか一人一人整列してんのおもろいな。
ああ、なんか、みんなから好かれてんのがわかる
好かれる理由もわかる。
自分はなんて言われるのかが気になって、モリシと一緒にAちゃんの方へ向かった。
「晋太郎〜！アイス小さいな、晋太郎が持つと」
「一口っすわ、ていうか激励の言葉はあ？」
「まあまあ、あとで一緒に一本吸お」
なんかへんにドキドキしながら俺の番。
「お、リリーくん」
「お疲れ様っす」
Aちゃん、忙しそうで最近めっきりアシスタントに来てなかった。
久しぶりに顔を合わすとちょっと緊張する。
「…ごめん、リリーくん」
「え？」
「計算間違えた。アイスなくなっちゃった」
隣で美味そうに食うモリシが気づいて、キョドりながら
「あ、リリー、食う…？」
と言って「食わんしいらん！」と子供のように俺はモリシのケツを蹴った。
Aちゃん、俺にはなんて言うつもりやったんかなあ。
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作者名：ぴぴ | 作成日時：2023年3月13日 14時
