へこむ ページ15
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「しゃ〜ないて！ネタの事なんも言われてへんし、悪くなかったと思うで、ネタは！」
喫煙所で授業終わりにモリシに肩をバンバンと叩かれる。痛いねん。
「…噛まへんかったら、ネタの事もなんか言ってくれたんに、俺がそれをさせられへんかった」
「あーもう！アホ！暗い！」
モリシは明るく振る舞うけど、モリシもきっと悔しかったと思う。
モリシは喫煙所から出て行って、俺がウジウジとしているから呆れて帰ったかと思ったが
バルコニーの手すりにタバコとライターが置いてあってホッとした。
また喫煙所のドアが開いて、モリシかと思って顔を上げるとAちゃんやった。
「お、リリーくんお疲れ！」
気まずすぎる。
ぜんっぜんおもろない漫才見せてしまって。
Aちゃんおろかお客さんを笑わせる事なんて俺になんかできへんのやないか？
「噛んだらあかんよ〜分かるか〜？」
Aちゃんなりに気遣ってくれてるようで
それがまた俺を惨めな気持ちにさせた。
「もう、Aちゃんに合わせる顔はないっす」
「タバコ吸いに来ただけやし」
「どうぞお吸いになってください」
沈黙と共にAちゃんの煙を吐く小さな吐息だけ聞こえる。
あー、俺って緊張しいなんか？
でも斎藤の時には噛まへんかった。
じわじわ、落ち込んでた気持ちが悔しさに変わっていく。
「あのさ、楽しいと早く次のボケして笑わせようとか、早く相方のツッコミ聞いてもらいたいとか、余計な事考えて噛んでしまうんよ。
楽しそうやったよ、リリーくん。」
Aちゃんはいつものように笑った。
たしかに、めちゃくちゃ楽しかった。
やっと2人で考えたネタを人に見てもらえるのが、嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。
「…楽しかったっす」
「なんでさっきから敬語なん、もう」
「…楽しかったわ！！噛んだ後はよう覚えとらんけど」
「噛む前まで、ちゃんと笑ってたよ、分かる君」
あの講師、分かる君て呼ばれてんのか。
「うお、Aさん。居るなら言うてくださいよ」
モリシが戻って来て、下の階の自販機で買ったであろうビックルを2本持っていた。
「ほれ、飲め！Aさんも！変な漫才見せてすんません！」
「わ、ええの？噛んでくれてありがとうリリーくん」
「…うるさいわ、ほんま」
見取り図のほんとのほんとの初漫才は良い結果ではなかったものの
モリシと組めてよかったと思った。
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作者名：ぴぴ | 作成日時：2023年3月13日 14時
