10分間 ページ19
.
「…え、うそ、和也くんごめん、嘘嘘」
まさかの反応に咄嗟にそう言って和也くんを見ると和也くんも笑った。
「和也くんが好きな訳ないじゃんねー」
ははは、と笑うと和也くんは
「そう思うんだ？」
と笑った顔は変わらず、手も握ったそのままで
私を見る。
好きな訳ない。
ありえないって。
「…そう、思う」
「A」
名前を呼ぶその声は今までにないくらい優しい声で、酔いもどんどん覚めていく。
「その顔も可愛い」
「え」
「なんか、全部可愛い、なんだろうなマジで」
こっちが聞きたい。
なんなんだ、本当に。
変なタイミングでタクシーが私の家の近くに着いてしまったけど少し救われた。
とりあえずこの今のやりとり家に一度持ち帰っていろいろと整理したい。
「…こちらでよろしいですか？」
運転手さんも会話をそりゃ聞くだろって感じで気まずそうに私たちに声を掛けた。
「あ、大丈夫です！！」
お金を和也くんに払おうとしたら、和也くんが運転手さんにカードを渡していて
「え、なんでお金」
「俺も降りる」
「ななななんで、和也くん家この辺じゃないじゃん！！」
「あ、すみません、領収書も」
何、降りてどうするんだ、ああ領収書もらってるし。ここでごちゃごちゃやりとりするのは運転手さんに申し訳ないし、とりあえず和也くんとタクシーを降りた。
ブーンと行ってしまうタクシーと
すぐその横には私の住むマンション。
そして、手を繋いだままの、私たち。
「和也くん、あのー」
「話途中だったし、帰れないっしょ」
「は、話…」
話というには一方的だった気もするけど
和也くん、いつもよりなんだかぐいぐいというか
どうしたらいいんだろう。
とりあえず家に上げる？
和也くんだし変なことは起きないとは思うけど
いや、でも既に変なことにはなっていて
この話の着地点がどこなのかが知りたい気持ちも多少は…ある。
「…和也くん、じゃあ少しだけ続き、聞く」
そう言ってマンションに足を向けた。
エントランスもエレベーターも廊下も、二人で歩いてるといつもと違うように感じる。
和也くんと帰って来るなんて出勤の時には思いもしなかった。
…って、部屋、出勤前のめちゃくちゃのままだ。
毎朝バタバタだから、ルームウェア脱ぎっぱなしだし、下着干したまんまだし、マスクとか昨日のを放置してた気がする。
「か、和也くん、10分待って…！」
「別にいいけど汚くて」
「いいから待って！！」
図らずも片付けをする10分間
私は一人きりになれて、さっきあった事を整理しながら片付けた。
もちろん10分後も頭が整理される事はなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 114人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴぴ(プロフ) - ぴーさん» ぴーさん❤︎最後まで読んでいただきありがとうございますー！！また近々、今度は屋敷さんで更新考えておりますので見かけたらぜひよろしくお願いいたします(T_T)❤︎❤︎ (5月10日 17時) (
レス) id: b6f7e28a9f (このIDを非表示/違反報告)
ぴー(プロフ) - 完結おめでとうございます！拗らせ具合めっちゃ好みでしたし、お二人の喋り方が本当にリアルでドキドキしました！ぴぴさんのニューヨーク作品大好きなので、今後もよろしくお願いします！！ (5月7日 3時) (レス) @page34 id: 218bcad816 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴ(プロフ) - まぽさん» まぽさん☻ありがとうございますーー！！やっぱり苗字がいいですよね！しっくりくる☻笑 また書きます！今度は甘ったるいのを！！今度は独身設定でいきますー！またぜひ覗きにきてください☻❤︎❤︎ (2023年5月3日 16時) (レス) id: b6f7e28a9f (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴ(プロフ) - たみ子さん» ありがとうございます(T_T)！！年始からはじめてだいぶ経ってしまいましたが、読んでくださって感謝しかございません(T_T)❤︎キュンとできましたか？！今度はもっとハッピーなのを目指します☻！！！ (2023年5月3日 16時) (レス) id: b6f7e28a9f (このIDを非表示/違反報告)
まぽ(プロフ) - 最後まで読みました！私も嶋佐さん呼びタイプです😊拗らせ具合も屋敷さん含め会話のやり取りもとっても楽しかったです！ぜひまたニューヨークでお話作って頂けると嬉しいです🎵屋敷さん独身バージョンとかも読んでみたいです！お疲れ様でした！ (2023年5月3日 0時) (レス) @page34 id: ba6bd9f6db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぴぴ | 作成日時：2023年1月1日 7時
