俺を忘れてしまう彼と #2 (ページ3)

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道枝side

そんなことでも楽しかった。

たくさん笑った。ひと冬の思い出を、1日に込めた。

本当に楽しい時間だった。

人生でこんなに楽しんだことなんて、ないんじゃないかと思えるくらいだ。

俺は自然と彼に惹かれ、彼も俺を慈しんでくれていた。

そして時刻が来て、残り15分になる。

それはイルミネーションの4分の3を進んだあたりだった。

自然と歩く速度が遅くなっていき、そして止まる。

大勢の中の一人であることを、昔は窮屈に感じたりもした。

でも今はなんでもない大勢の中の二人であることに、心が落ち着いた。

イルミネーションの光を見て言葉を失くし、重ねた手に力を込める。

そうしながらふと、俺の感情の行方について思いを巡らせた。

記憶と同じように、今のこの感情も消え去ってしまうんだろうか。

根付くことはないんだろうか。

あくまでそれは情報として頭では処理され、情処の動きが蓄積されることはないんだろうか。

願わくば、残り続けるものがありますように。

このひと時の感情が、明日の俺にも繋がっていきますように。

忘れませんように。

道枝「…忘れた、ないで」