20,温泉旅行編 ページ22
ここに来るまでに色々なことがあったな、と針は思いを巡らせた。当初は、温泉の宿までタクシーで行く予定だったのだが、せっかくなので少し手前で降りて途中から歩いて行くことになった。組長からの提案だった為誰も文句は言わず、Aに至っては大賛成。とても喜んでいた。
宿から一番近くて、景色が良い所で降ろして頂けますかと頼んだところ、運転手は一行を紅葉が素晴らしく舞う森林で降ろしてくれた。なんとも大自然。しかし、問題はそこからだったのだ。
***
「一本道だそうだ。ここから歩いて行こう」
「すげーなー…。こういうの幻想的っつーんだよなぁ」
廻が先頭をきって歩き、その後をAが感嘆の声を漏らしながら進んでいた。針は一番後ろについて歩く。紅葉は今が一番綺麗な時期だろう。露天風呂からは、一望出来るかもしれない。少々胸も高鳴るというものだ。
「そういえば、Aは初めてだとか言っていたな」
「あぁ、初めてだ。話しには聞いてたから、どういうとこかは知ってっけどな」
「女風呂と男風呂で別れるから、迷惑かからないようにな」
針さんは心配性だなぁと笑いながら進んで行く。心配にもなるだろう。まぁ、いつ暴れるか分からないので、いつも心配ではあるが。しかし大自然の中を歩くというのも中々ない。今は心配よりも、この状況を楽しもう。
「おい…止まれ」
先頭を歩いていた廻が、静かに声を響かせた。その声に、後ろの二人も警戒態勢に入る。三人と目の前に現れたのは、巨大な________熊だった。
「く…ま」
「熊」
「……」
……………。
「熊か、私がやるぜ」
「おい、ここではまずい。逃げた方が」
おそらく、山から下って来たのだろう。餌を見つけたと言わんばかりの目の輝きに、周りの人々が固まった。一番近くにいる三人に、心配の目を向けている。しかし、体が動かないのだ。
周りの人達は、逃げるという選択をした。絶対的な力の前で、他人の事など考えていられない。あの人達も無事であってほしいというささやかな願いを込めて、逃げる。逃げる。
だが________。
「おい。こいつ、俺たちを餌にしようとしていないか？」
「おぉ、おぉ。随分美食家じゃねぇか」
まさか、かかっていこうとしているのか？やめた方がいい。何故なら、相手は、人間よりも巨大な腹の減った熊だぞ？
「「喧嘩を売っているのか？(売ってんのか？)」」
「どうしてそこだけ気が合うんだ…」
針は、もう止めることを放棄したのだった。
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マリイ - 治崎廻大好き (2022年3月20日 16時) (携帯から) (
レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
いずでく - うわーーーーん！ (2019年1月8日 16時) (レス) id: c864c21ee8 (このIDを非表示/違反報告)
ねじる - 泣きました。。。良いお話です。でもこれ見ると、死穢八斎會の人達ってホントにヴィランなのかな？って思えてくるwww良いことですけどね！ (2018年12月9日 15時) (レス) id: b17a466711 (このIDを非表示/違反報告)
百聞(プロフ) - ゆうなさん» 泣いていただけるとは思いませんでした。ありがとうございます。感動していただけたことが何よりも嬉しいです。 (2018年4月29日 13時) (レス) id: c88b707ff9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - めっちゃ泣いてます………感動しました…素敵なお話ありがとうございました…！！！完結おめでとうごさまいます。更新お疲れ様です (2018年4月29日 13時) (レス) id: b1153871a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：百聞 | 作成日時：2018年3月4日 21時
