記憶が消えるあの日まで、【歌い手】2

あの日から12日 ページ19

ななもりside


今日は俺の番。

ころちゃんに渡すお見舞いのものや、飲み物を持って家を出る。


車を走らせて5分、


病院についてまずころちゃんの部屋に行った。


な「…………おじゃましまーす。ころちゃーん。」


こ「あ、なーくんじゃん！来てくれたんだ。」


ころちゃんはスマホで音楽を聞いていたみたいだった。


な「なんの音楽聴いてたの？」


こ「んー。「おかえりらぶ」」


その言葉を聞いて胸が痛むのは俺だけかな？


な「……………どうして？」



こ「………またみんなで歌える日が来たらいいのになって。Aに「おかえり」て言いたいなって」



な「……………そうだよね。俺もそう思ってる。
だけどまず、俺たちはころちゃんに「おかえり」って言わないと。」


こ「まーね。早く治さないといけないからね。」


な「だから早く帰ってこいよ！」


こ「………うん。リハビリ頑張ります。」


俺はころちゃんにお見舞いに持ってきたものを
あげて、部屋を出た。


次は…Aちゃんか。


あれから約2週間がたった。

記憶を戻す前に

Aちゃんは目を覚まさない。

医師さんはどっかで起きるって言ってたけど…


心配だよ。



俺はゆっくりAちゃんの部屋を開けた。



相変わらず目を瞑っている。



な「…………ねぇ、起きてよ。俺たちに
「おかえり」って言わせてよ。」


俺が問いかけても返事はない。


………………………………………




なんで起きないの？どこか体調悪いの？


返事をしてくれないと心配だよ。


そんなことを聞いても無駄。



俺はずっとAちゃんの顔を見ていた。



気持ち伝わらないかなって





顔を見てたら




右目から涙が流れた。




俺じゃないよ？Aちゃんの右目から。




その涙は俺の気持ちの返事なのかな。



「みんな、心配かけてごめんね」






っていう返事。


……………

Aちゃん、返事してくれてありがとう。




いつでもいいから早く帰って来てね。

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