黒薔薇 (ページ18)

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⑨【G.M side】ページ18

注文した『ホットチョコとレモンタルト』が俺の目の前に置かれた。
運んでくれたのが、あの彼女で俺は正直座りながらまた目眩を起こしそうになっていた。

俺にしか分からない『香り』のせいだよな…。
だから、彼女には素っ気なく返事をしてしまったけど内心では喜んでいた。

俺はまず、コースターに乗せられた白いマグカップを手に持った。
ホットチョコを少しだけ飲むためだ。
いかにも、熱そうだということは分かるため『フーフー』と冷ましながらカップを傾けた。

ほどよい甘さ、滑らかの舌触り、そしてカカオの香りが鼻腔に広がっていく。
俺は一旦マグカップをコースターへと戻した。

次にお待ちかねのレモンタルト。
先程の運んでくれた彼女が作ったということは分かっている。
俺はレモンタルトにゆっくりとフォークを入れて食べやすい大きさにしてから口の中へと運んだ。

『うまい…』

爽やかなレモンの香りと滑らかでしっとりとしているタルト生地。
全てが完璧と言えるようなレモンタルトだった。

そしてもう1度、口に運んだ時俺はまた変な感覚に襲われた。
何故か『彼女の顔をみたい』という想いで満たされていたのだ。

これもまた俺だけのようで。
俺はとりあえず、落ち着かせるために店内の隅に設置されているお手洗い場へと駆け込んだ。