黒薔薇 (ページ13)

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⑤【G.M side】ページ13

俺は16時になるまでただひたすら耐えていた。
早く新作が食べたいんだぁ！という心の叫びを、どうにかして押し殺す。

そして…

16時を告げる時計の音。
先輩から「剛！お疲れ様、上がりな♪」と声をかけられた。
『お疲れ様でした』と軽く挨拶して、俺は早々に裏へ行き帰る準備をした。
ものの1分程度で、片付けを済ませ俺は自分の車に乗り込んだ。

自然とアクセルを踏んでしまいそうになる。
そして車を走らせること10分で目的のあのお店へと到着した。
夕方のため、この時間いつもより人が少ないと思っていた俺の目の前に広がる光景。

『なんだよこれ…』

この時間で行列になっていた。
いやいや、普段ならねぇのに…って言うといろんな人に目をつけられそうだから言わねぇけど。
何でこんなに並んでだよ！？

俺は一応、昼に予約をしていたため目的の新作は残っているはずと安心しているけど…。
さすがにこれはすげぇよ(笑)

とりあえず、俺は最後尾に並ぶ。
待ち時間を考えると最低でも20分くらいになりそうだ。

そう思っていた時、列の前の方で「ありがとう！」と声が聞こえ始めた。
それは段々と後ろの方にまで回ってきていた。

どうやら、店員がコーヒーを淹れてくれたらしく外で並ぶ俺らに配っているようだった。
この店の接客や気配りは本当にすげぇって来る度に思う。

そして、俺もコーヒーを貰った。
その時俺にコーヒーを渡したのは女性。
黒髪のボブだった。

「寒いですよね、これどうぞ！」

彼女はとても可愛らしい笑顔で俺にコーヒーを渡してきた。
俺はそれを『あ、ありがとうございます』と少し素っ気なく返してしまった。
すると、恐らく彼女の名前だろうか、もう1人の女性が名前を呼んでいた。

？「A〜！急いで〜！！」

Aと呼ばれた彼女は「はーい！！」と返し、俺に「では！」とこれまた笑顔で返して戻った。

あれ、何だこれ。
すっげぇ、彼女から甘い香りが…。
っあぁ、すんげぇ心臓バクバクしてるし。
俺だけかな…。
他のお客さん、全く気にしてねぇし。

俺は自分の身に起きた不思議な体験に疑問を持ちながらも、店内に入るのを待った。