黒薔薇 (ページ11)

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私はパパに出来上がったレモンタルトを渡した。
形のバランスが崩れたことを伝えると…

パパ「これが崩れてるうちに入るのか？」

とパパは返してきた。
いや、誰がどうみたって崩れてるよ…
心の中でそう呟く。

パパ「パパには全く崩れているようには見えないぞ？というか、こんなにキレイな見た目だと普段作るスイーツたちと比較されそうだな(笑)」

A「いやいや、それはないから大丈夫だよ(笑)」

パパ「いや、多分される(笑)まぁしかし、可愛いAの作ったレモンタルトだ。出さない訳にはいかないだろう？」

何故か嬉しそうなパパ。
ってか、味見せずに出すのはさすがに問題があるのでは？(笑)

A「パパ、味見しなくていいの？」

パパ「あ、そうだったな。では…」

私は味見用に作った方のレモンタルトをパパの目の前にそっと置いた。
パパはフォークで食べやすいサイズにカットし、口に運んだ。
隣では、私以外に他のパティシエたちも何故か手を止めて見守っていた。
(営業中なのにね(笑))

パパ「……ﾓｸﾞﾓｸﾞ。」

A「(大丈夫…かな…)」

するとパパはフォークを皿の上にそっと置き、私の方を笑顔で向いた。

パパ「パパは泣きそうだ…」

A「え、まずかった…？」

パパ「こんなに美味しいものを作れるようになって…」

A「え？」

パパはいきなり私を抱きしめてきた。
ふぎゃぁ、と変な声が出て恥ずかしいよ…。

パパ「お前はパパの誇りだァァァァァァ！！」

A「(ヒィィィィ)」