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──ポタリ
瓶の中に赤い雫が落ちた。ゆらりと波紋が現れ血の海をさざめく。ルビーのように真っ赤なそれは瓶から溢れんばかりまでなみなみと注がれる。やがて雫が止んだとき、真っ赤に染まった掌に収まるほどの瓶が二つテーブルに並んでいた。
「これで足りるかな」
「足らすんだよ。前も言った気がするけど」
「門も開かないといけないのに」
虫も寝静まる深夜、と言いたいところだけど魔界で生きる者たちはほぼ夜行性。街中のほうからわいわいと賑やかな喧騒が風に乗って聞こえてくる。
月明かりの差す部屋で私とサーシャは戦闘の準備をしていた。血液不足になったときに摂取する血。瓶に詰めたそれは明日から常に持ち歩くつもりだ。いつ襲ってくるかわからないから。
「…明日一回向こうに戻って配信して、里帰りするっつってくるわ。すぐ戻るから」
「私も行く。社長に言わないと。いつまでも隠し通せないから」
「…そ、」
ベッドにごろんと横たわって適当な返事をしたサーシャはそのまま壁際に転がっていく。そしてそのままゴンッと頭を打ち付けた。
……え？
「何してるの」
「…悩みを飛ばしてる」
「…」
「……ツッコめよそこは」
冗談とわかりきっているのに声がでない。ツッコむ気力も起きなかった。それは何故か。…わかりきってることだけど。
「──怖い？」
サーシャの突然の声に思わず肩を震わせた。いや、それだけじゃない。彼の質問があまりにも的を得ていたから、胸中を言い当てられてびっくりしたからだ。
「…怖いって言ったら？」
はっきり答えたくなくてわざと曖昧な返答をするとサーシャはむくっと起き上がり、静かに手招く。おとなしくそれに従い彼の隣に腰を下ろせばいきなり肩を抱き込まれた。
「…大丈夫。お前は守れるよ」
「…」
「お前の守りたいものは俺の守りたいものでもあるから。心配すんな」
春の日差しのように温かいその声色に乗った言葉たちがすっと胸に入ってくる。そして徐々に冷たく、凍っていたモノが溶けていく感じがした。
守りきれるのかという不安、プレッシャー、皆からの期待、サーシャとシャロンとの約束。
全てが私の心を締め付けていたのかもしれない。蝕まれて、呪いに安易にかかって結局は…
「…うん」
「…ん、」
いけない。自分を見失うところだった。しっかりしろ、ラーシャ。
進むべき道を見極めろ。正しい道ならばそれがたとえイバラの道であっても業火が煮え滾る炎の道であっても歩き続けるまで。
でないと大切なものを守れないから。
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houkouonchi13(プロフ) - 新生活頑張って下さい！！更新も無理なさらないでくださいね…！！！！楽しみにしてます！ (2021年4月14日 1時) (
レス) id: 2b5068bd37 (このIDを非表示/違反報告)
konayuki2222222(プロフ) - 続編おめでとうございます！やっぱり最高です！ (2021年3月10日 21時) (レス) id: f927dca413 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みかん | 作成日時：2021年3月9日 9時
