･ ページ34
「…なあ父様」
「なんだ」
俺とラーシャの涙がやっと枯れた頃。ライバーたちは椅子に腰掛けて俺たちの様子をじっと見ていた。
「……シャロンの強さは、どんくらいなの、今」
「…おまえたちの半分にも満たんな。まだまだ未熟だ。魔力保有量も成人した吸血鬼に比べればまだ少ない」
赤く腫れた目元を擦りながら聞いてみると苦い答えが返ってくる。ラーシャが何度目かわからないためいきをついた。
「…だがな。戦うのはおまえたちだ」
「……」
「死ぬかもしれない、なんて考えは捨てろ。必ず生きて帰れ。サーシャ、次会うときが死に目なんて、私は認めないからな」
「…誰も死ぬって言ってねーよ」
死ぬ恐怖なんて、とっくに捨てたはずだったのに。
「おまえとラーシャの強さは魔界トップ。それでもヴァンパイアハンターに負ける可能性は大いにある」
「…俺は、ただ」
「ラーシャさえ守れればいい、なんて思ってないだろうな、サーシャ」
父様が宙で手を振った。氷の矢が顕現し、室内の温度が下がる。
「ラーシャも同じだ。サーシャさえ守れれば、と思ってないか？」
まだ俺の肩に頭を預けているラーシャがびくんと反応した。でも俺はコイツのこと言えない。
だって、俺もそう思ってるから。
「……おまえたちの血は特殊だ。特定の相手に摂取させればそれは何よりも優れた回復薬となる」
父様は静かに手を振りかぶった。氷の矢が俺の腕に突き刺さる。シャツを貫通して肌に刺さったそこから血が流れ出た。
「お、お義父様…！？」
慌てたラーシャに見向きもせず、父様は続ける。
「その相手はおまえたちなのだよ。互いの血は最高の薬。覚えておけ」
そう言って出ていってしまった父の背中を追いかけようとしたが足が動かなかった。死の危機に、高い壁にぶち当たったからかもしれない。
「…ラーシャ」
未だ震えている彼女の肩を抱きこむ。やることはたくさんあるんだ。こうしちゃいられない。
「……約束な。またゲームする。また、またいちから社で会う。また俺の配信にスパチャしろ。絶対」
「…約束嫌いって言ってたくせに」
赤スパな、と言って俺はライバーたちに向き合った。ラーシャも隣に並ぶ。
「死ぬ気なんてさらさらないから」
「……私も」
「セーブもない。リスポーンビーコンも戦場にはない」
「…“生きて帰る。それだけ”」
前を向いてしっかり決意を告げたラーシャの小指を自身の小指と絡ませた。
「──約束、な」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 244人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
houkouonchi13(プロフ) - 新生活頑張って下さい！！更新も無理なさらないでくださいね…！！！！楽しみにしてます！ (2021年4月14日 1時) (
レス) id: 2b5068bd37 (このIDを非表示/違反報告)
konayuki2222222(プロフ) - 続編おめでとうございます！やっぱり最高です！ (2021年3月10日 21時) (レス) id: f927dca413 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みかん | 作成日時：2021年3月9日 9時
