･ ページ32
「…どうすんだよ」
「どうもこうもシャロン自身が決めるんじゃないの」
「…嫌だよ、それ」
「私も嫌だよ」
カーテンの隙間から月明かりが差し込んでくる。もう夜か、と思うとそれを肯定するかのように空いた窓の枠に梟が止まってホー、とひと鳴きした。
「……はあああああああああ、」
サーシャが特大のためいきをこぼし、それに笑っていると扉の開閉音が聞こえた。
「…シャロ──」
そろって振り返り、目を見開く。きっとサーシャは駄洒落に気づいたような顔をしているであろう。
だって、
「…な、なん、で…」
「…頭痛が痛い」
本当に頭痛が痛いというほどに知能が下がりそう。腹痛が痛いでもいいけど本当に痛くなってきた。これ以上悩みの種を増やさないでくれ。
「……なんでいんだよぉぉ…」
がくっとサーシャが項垂れる。お義父様はニヤニヤ笑っていた。
「これにはラーシャもびっくりしたか？」
「びっくりで死に至るところです」
「ハハ、それは困る」
肩を揺らして愉快そうに笑った彼の隣にはシャロンが、二人の後ろにはなんと、深紅のローブを纏った黛をはじめとするライバーたち。弦月くんと刀也くん、叶に委員長、その他にもいっぱいいた。
「父様、いくらローブを着たとしても悪い輩がいるんだよ。襲われたらどうすんだ…マジで…」
「守護の結界を張っておる」
「自信満々に言うな」
って、今はそれより
「サーシャ、どうするの」
「あ？元のカッコに戻る？」
「なんでよ。このままでいないといけないでしょ。シャロンのこと」
「あー……」
後ろ頭に手をやったサーシャは悩ましげに目を伏せると数秒の後、よしと呟きシャロンを手招いた。
「……父上、母上」
「父上！？葛葉さんが！？」「しっ」
ああ、シャロンがいることは叶にしか言ってなかったっけ、なんて思いながら咳払い。気持ちを切り替えてシャロンと目を合わせた。
「……おまえはどっちがいい」
「……怒りませんか」
「…わからん」
「ちょっと。怒らないから正直に言って？」
素直にわからんじゃないのよ。何言ってんだこの父上は。
じろりとサーシャを見ていると突然、シャロンが床に膝をついた。
「シャロン…！？」
「いい、ラーシャ。コイツの話を聞け」
「う、うん…」
下から強い眼差しで見つめてくる娘の言葉を息を飲んで待つ。変に緊張してきた。
「私は、父上と母上の強さを把握しているつもりです──」
しかしその強い眼差しとは裏腹に、彼女の声はひどく震えていた。まるで飼い主を失った子犬のように。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 244人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
houkouonchi13(プロフ) - 新生活頑張って下さい！！更新も無理なさらないでくださいね…！！！！楽しみにしてます！ (2021年4月14日 1時) (
レス) id: 2b5068bd37 (このIDを非表示/違反報告)
konayuki2222222(プロフ) - 続編おめでとうございます！やっぱり最高です！ (2021年3月10日 21時) (レス) id: f927dca413 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みかん | 作成日時：2021年3月9日 9時
