彼女と心配性な彼と優しい彼と俺�� ページ16
.
「瑞稀にごめんって、言えるよね？」
「うん、言う」
「じゃあ、戻ろ？」
「…りょーちゃん、」
俺のことを「涼ちゃん」と呼ぶときは、Aが甘えたいときだ。名前を呼ばれて、振り向くと俯いて手を差し出す彼女。
「ん？…ふふ、はい、手つなご」
「何で笑うの、涼ちゃん嫌い」
「俺はAのこと好き」
「…ふざけてんの？」
「そーゆーことにしといて？」
その手を取って、指を絡める。
それに応えるように、彼女の指が俺の指をきゅっと包む。その仕草が嬉しくて堪らない。
彼女が甘えてくれたときは、とことん甘えさせてあげるのが、俺なりの愛情表現だ。
「瑞稀、」
彼女の手をぎゅっと握って、ドアを開ける。きっと、みんなで優斗のアップに付き合ってるのだろう、音楽が流れていた。ドアの音はそれほど大きい音でもないのに、すぐに瑞稀が気付いて踊るのを止めた。
彼女の握る手に力が入った。
瑞稀が近づいてきて俯いた顔をゆっくり上げた。不安そうだけど、でもどこか吹っ切れた顔。うん、大丈夫そうだ。ガリさんがきっとフォローしてくれたんだな。
俺の手を握ったまま動こうとしないAから手を離して、肩を抱く。そのまま俺の前に出すと、瑞稀が一歩こちらに近付いた。
「A、」
「あの…、」
「ごめん、ほんとに。俺、マジでそんなこと思ってないから」
「瑞稀、」
「ほんとに心配なの、Aが倒れたら、俺、心配なんだよ。心配で、なんも手につかなくなるし、Aが辛い顔してたら俺も辛いの。それはわかってほしい」
普段は自分の気持ちを口にしない瑞稀が、素直にAに言葉をぶつける。瑞稀の珍しく素直な言葉に、Aはどこか嬉しそうだった。
ほら、やっぱり俺の言った通りだったでしょ。だって、瑞稀とAは、似たもの同士だから。大事なときに、自分に素直になれないところも、本当によく似てる。
「……」
「勢いに任せたとはいえ、思ってもないこと言ってごめん、許して」
「わたしも、ごめん。意地張って」
「ん」
ほっとしたように、瑞稀がAにまた少し近寄って。自然と笑ったAの頭にそっと手を乗せて、頭を撫でた。
ほら、こんなにも瑞稀はAのことが大事なんだよ。
瑞稀は自分で気付いてるのかな、Aの前ではこんなにも優しい顔をしてること。
心から、大切だって顔をしてること。
ま、俺は教えてやらないけどね。
彼女と心配性な彼と優しい彼と俺�Β�←彼女と心配性な彼と優しい彼と俺��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 217人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まみみ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます！幼馴染みの橋本くんが報われるといいなぁ (2022年4月6日 14時) (
レス) @page27 id: c26bea1767 (このIDを非表示/違反報告)
miso.(プロフ) - 作ちゃん落ちがいいなー (2022年3月31日 1時) (レス) @page11 id: 9507af58bb (このIDを非表示/違反報告)
ききめろ(プロフ) - 更新楽しみにしてます！夢主と橋本くんが良い関係になるといいなぁ♪ (2022年3月10日 0時) (レス) @page4 id: c309b3e706 (このIDを非表示/違反報告)
かいとん - 素敵な作品ですね！ストHiHiも好きなので嬉しいです！！( ´ー`)これからも頑張ってください！ (2022年3月9日 6時) (レス) @page3 id: fb912074b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mi ayu | 作成日時：2022年3月8日 18時
