HiHi Jets Girl IX (ページ10)

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夏のはじまりは、嵐のはじまり④ ページ10

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「ごめん、遅くなった！」

はしもっちゃんとガリさんが揉めはじめてから数分のことだった。一瞬、静まり返った瞬間にバタバタと廊下を走る音が聞こえてきた。

その瞬間、ガチャっとドアが勢いよく開いて、Aが会議室に入ってきた。彼女の登場に、作間は嬉しそうに立ち上がりニコニコして。

ほんっとわかりやすくてコイツは可愛いよなぁ。

作「あ、Aちゃん！」

「ごめん、待たせたよね？」

作「謝らないでよ。仕事なんだから、」

撮影終わりなのか髪の毛が綺麗にセットされてメイクもバッチリ。でも、急いできたのか服装はめちゃくちゃだ。羽織ってるシャツだって、ほら。ボタンかけ間違えてるし。

瑞「A、慌てすぎ。ボ」

涼「A、ちょっと来て」

「え？なに？」

涼「ボタン。掛け間違えてる」

「あ、え？あ、ほんとだ」

涼「もー、ほら。おいで？」

俺も気付いたのにな、なんて思いながら、はしもっちゃんに大人しく寄っていくA。ボタンを掛け直してもらうと「ありがと、りょー」とへらっと笑った。その笑顔に、先程まで張り詰めていた空気が柔らかくなった気がした。

彼女が来たなら、きっと、大丈夫だ。

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猪「俺らは、これが一番良い方法だと思ってる、ん、だけど…」

「……」

猪「Aさんは、どう思う？」

さっきから言葉を発しない彼女に、ガリさんが恐る恐る話しかける。演出や振り付けを考えているガリさん、司令塔ははしもっちゃんだけど、正直、最後の決定権は彼女にあったりする。

ガリさんが意見を出して、俺らが賛同して、はしもっちゃんがまとめる。そして彼女がGOサインを出して、物事が進んでいくのが俺らのスタイルだ。

猪「後半は予定通り６人のセトリにしたいんだ。どうかな？」

「……」

ガリさんの顔を真っ直ぐ見たまま表情を変えないAに、ガリさんの顔がどんどん曇っていく。あんな強気なガリさんも、やっぱりAには弱いんだなぁ。

涼「A、」

「……」

涼「俺は、やってみたいと思ってる」

Aの横で、はしもっちゃんは決意を表してくれたけれど、彼女は黙ったまま。はしもっちゃんがAの顔を覗き込むけど、Aはなかなか首を縦に振らない。

でも、Aだってもうこの方法しかないってわかってるはずだし、作間とガリさんの前では弱音は吐かないから。

涼「A、なんか言って？」

「……わたしは、無理だと思う」

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