ピンチはチャンスと言うじゃないか�� ページ9
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猪「Aさん！後ろ！！！」
「え」
涼「A！！」
俺が叫んだ時には、もう遅かった。
俺の声に振り返った彼女は、目の前の人を避けようと咄嗟に身体を捻らせて、転倒した。彼女の一番近くにいたはしもっちゃんが彼女を抱きとめようと手を伸ばしたけれど、彼女の反射神経の良さに反応出来ず彼の手は空を仰いだ。
涼「A！A！」
瑞「A！大丈夫か！？どこ捻った？！」
バランスを崩して倒れた彼女は、顔を歪ませて足を抑えている。はしもっちゃんは必死に彼女の名前を呼んで、瑞稀くんは、どこが痛いのか彼女の足を触って確認している。
どうしよう。
彼女の足が変な方向に足が曲がったのが、見えた。
彼女の足が曲がる瞬間、変な音がした。
彼女の足が無事じゃなかったら、どうしよう。
一気に不安が押し寄せてきて、ただただ２人の行動を見つめることしかできなくて。
涼「作間！優斗呼んで！」
作「は、はい！」
はしもっちゃんが作間のことを「作間」と呼んだ。普段、温厚な彼は作間のことを「作ちゃん」と優しく呼ぶ。絶対に、呼び捨てなんかしない。そんなはしもっちゃんが、声を上げて「作間」と呼んだ。
彼の腕の中で必死に痛みと戦う彼女。彼女を抱きしめて、頭を撫でて「大丈夫だよ」と声を掛ける。どう考えてもはしもっちゃんの方が焦っているのに、彼女には優しく声を掛ける。
こんなときまで、紳士にならなくて良いのに。
作「優斗呼んできた！」
優「大丈夫？！」
涼「優斗、フォローお願い」
優「おっけ」
瑞「病院行こ、マネに連絡する」
こういうときの年上組の対応は、本当に頭が下がる。普段はそこまで感じないけれど、こういうときに２歳の歳の差をとても感じる。
Aさんが転倒した原因の張本人は、自分の軽率な行動のせいで、彼女が大変なことになっていることに顔面蒼白になっていて動けないみたいだった。
そんな彼に、歩み寄るのは。
作「優斗…？」
いくら小学生とはいえ、稽古中にふざけて走り回った挙げ句、メインのタレントにぶつかりそうになるなんて言語道断であって。
俺だったら、大切な彼女をこんな目に合わせて「どう責任取ってくれるんだ」と怒鳴りつけてしまいそうなのに。
でも優斗は、怒鳴るどころか目線を合わせてしゃがみこんで。小学生のJr.に「ケガはなかった？」「大丈夫だから、休憩しよっか」と優しく声を掛けていた。
俺と作間は、なにができるんだろうか。
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作者名：mi ayu | 作成日時：2022年8月20日 18時
