奇病/IF 12 ページ12
…が、ルーシャスからは
「は…はは…助かるなら…僕……
こんな、早々に…式を挙げたいなんて、
言わない…よ……?」
スリッと指で顔をなぞられる。
「…神父…さ、ん…」
声を出すのも辛いのだろう。
ルーシャスから絞り出される音。
「…誓いの……」
神父は一瞬躊躇ったが、それでも
ルーシャスの希望に添える様に口を開いた。
「ルーシャスもう、もう辞めよう。
帰って治療方法を探そう。今からでも
体力を温存すれば…」
「ルーシャスは…ジルギアを生涯の
パートナーとし、健やかなる時も……今
見たく…病める時も、喜びの時も、
悲しみの時も富める時も、貧しい時も、
ジルギアを愛し、敬い、慰め合い、
共に助け合い……その…命ある限り…
いや、死しても尚、真心を尽くすことを誓いますか?」
俺の言葉を気にも止めず神父は誓いの言葉を
話す。
「…ち、かい…ます。」
「ルーシャス…式はまた今度でも…
出来るさ…今日でなくとも…」
ルーシャスを抱える手が震える。
「ジルギア、貴方はルーシャスを生涯の
パートナーとし、健やかなる時も、
病める時も、喜びの時も、悲しみの時も
富める時も、貧しい時も、パートナーを
愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い
その、命ある限り真心を尽くすことを
誓いますか?」
「…」
言ってしまったら
ルーシャスが居なくなる。
そんな気がして口から言葉が出なくなる。
「…ジル…君…?」
ルーシャスの瞳の色が徐々に青色から
灰色に変わっていく。
「おっさん…!!!」
嫌だ…
失いたく無い。
ルーシャスの頬に手を添え、撫でる。
「ッ…誓い、ます。」
その言葉を聞くとルーシャスは
満足気だった。
「…では誓いのキスを」
ルーシャスを抱える手に力が入る。
フッと笑ったルーシャスがキスを待ち
目を伏せた。
唇を近づける。
「…ジルギア…」
「ルーシャス」
「「愛してる」」
口付けを交わした。
口を離すとルーシャスは満足そうに
幸せそうに微笑んでいた。
そして、
顔の半分を覆っていた花がポッポッと
新たに芽を出す。
左半身にも、指先にも。
左手にハメられていた結婚指輪を
覆う様に。
ルーシャスの左手を持ち上げ
薬指にキスをする。
「ジル君…ジル君の左手を…
僕の口の、前に…」
「ルーシャス…」
言われた通りにすると、お返しと
言わんばかりに俺の左手の薬指に
ルーシャスはキスをした。
「ジ、ル君……愛し、…て、る…よ……。
僕も…、…マ…シャ……も、…」
「…あぁ。」
「僕…を、…わ、すれ…」
「忘れないさ。」
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作者名:鯱 | 作成日時:2020年12月2日 19時