どうか天女とバレないで

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「素うどん2つ。1つはかしわ天つけて」

『かしこまりました！』

「七味ありますか？」

『あ、七味...すみません聞いてきます...！』

「うどん来ないんだけど」

『申し訳ございません。なにうどんをご注文になりましたか？』

「すいませーん！天ぷらついてないんですけどー！」

『すみません！今お持ちします！』

(はぁ...大変...！)


◇◇

　今日が開店初日だったらしいこのうどん屋さんは、まぁまぁ繁盛した。

　しかし、大きな問題点があった。

　1つ、接客の効率。伝票がないため品の間違いが発生し、時間取らせてしまう。
　2つ、料理の質。出汁に使った昆布や鰹節がそのまま入っていたり、天ぷらが美味しくない。

　少ないにしても、重大すぎる問題たち。まずは何から片付けようか...

「おつかれさん。これ賄いね」

　グラサン店長がうどんを運んできてくれた。相変わらず昆布が浮かんでいる。

『ありがとうございます...いただきます』

　一口啜ると、麺は美味しい。しかし、汁が邪魔をしてきた。

　...出汁って大事なんだなぁ...椎茸って美味しいし万能だけど、うどんの出汁には合わないかも。

　てんぷらも衣にビール入れたりしてサクサクにするらしいけど、発泡酒ってこの時代ないもんな...

　麺はなんでこんなにコシがあって美味しいのかな。作ってる人が知りたい。

『あ〜...ご馳走様でした』

　汁を最後の一滴まで飲み干し、手を合わせる。

　問題はたしかに大きいけど、どうしようもない訳じゃない。
　料理は身近に上手な人がいる。伝票は、うーん...木簡、用意できるかな...？出来なかったら、竹とか...

　とにかく、何もせずに不味いうどんを提供して日銭を稼ぎたくはない。やるなら、徹底的に。

『頑張るぞ』

　

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