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瞬きの一瞬のうちに、私は宙へ浮かんでいた。
そのまま重力に抗うこともなく落ちていき、思い切り川に突っ込んだ。
打った背中が痛い。息が苦しい。寒い。
濁った水中を見て、必死に水面から顔を出そうと頑張った。
流れが速い。足もぎりぎり届かない。
それでももがいていると、歪めた視線の先で倒れている人が目についた。
あの人も落ちてきたのだろうか。それだったら私より痛い思いをしていそうだ。
そんなことが頭によぎるが、こっちも必死に生きようとしているため、それ以上心配することはできなかった。
私はどんぶらこ、どんぶらこと流されていった。
◇◇
下流まで流されて、岸でぐったりしている私を助けてくれたのは農家の夫婦だった。
寒かったね、怖かったね、と明らかに変人の私を不思議がることもなく温め続けてくれた。
この恩は返しきれない。
それから、私は時を超えて昔の時代に来てしまったらしい。日本史がポンコツなため、江戸時代くらいだろうという予想しか立てられなかった。
着ていた服は南蛮の人に売った。そしたら金銀をたくさんもらったので、恩返しに夫婦にすべてあげようとした。
流石に全ては貰えないから、息子の学費を払う分だけでいいと、殆どが帰ってきた。大事に使おうと思う。
正の字を毎日書いて、今日で六つ目。つまり、1ヶ月を生きたということだ。
畑仕事は大変。おもったよりも重労働。
着物は着なれない。袴の履き方はやっとマスターした。
日本だからというのもあるが、案外、異世界に来ても生きていけるものだな、としみじみ思う。
少し窮屈な世の中から開放された感覚は、なかなかに心地よかった。
ある日、夫婦から「天女」の話をそれとなくされた。
私は天女らしい。そして、ある特定の場所では天女は虐げられる存在なのだそう。
『なら私は幸運ですね。優しいおば様とおじ様がいらっしゃって、幸せに養ってもらっているのですから』
そう言うと夫婦は嬉しそうに笑った。この話をするのも億劫だったのだろう。
本当に私はラッキーだ。幸せな暮らしをさせてもらっているのだから。
このまま、のびのび生きていこう。
「とーちゃんかーちゃんただいまー！」
おっと、夫婦の息子が帰ってきたみたいだ。
私のこと、受け入れてほしいな。
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くまのん - 神作品を発見‼とっても面白かったです‼ (5月3日 16時) (
レス) id: 333fed96b4 (このIDを非表示/違反報告)
ますしん(プロフ) - わくわくどきどき…続きが気になりすぎてどうしよう！！現世での伊作もどきとの関係も気になる！ (4月25日 20時) (レス) @page24 id: 3a092db897 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - うわあ！待ってました！！ついに接触！？面白すぎます！！ (4月15日 13時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
おんぷ - とても続きが気になって内容忘れないよう何度も読むくらい好きな作品です。 (3月31日 1時) (レス) id: 4cbcaaccff (このIDを非表示/違反報告)
おんぷ - 私だけでこちらの不具合だったらごめんなさい。更新や日付けは新しくなるのに20から先が表示されないのは 作者様がまだ非公開にされてるからでしょうか？質問失礼しました (3月31日 1時) (レス) id: 4cbcaaccff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シュモ | 作成日時：2024年2月29日 17時
