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「……最悪……っ」
ぎゅっと抱き締めるように腕を擦る
賑やかで華やかな人の波から
離れるように
ただ歩いた
コートもバックも
居酒屋に置いたまま
タクシーにも乗れないなんて……
スルギに連絡しようにも
スマホも、その置き去りのコートの中
ぐずぐずと
思い出したように涙が視界を歪ませれば
ヒールの痛みに
涙も消えて
寒さに腕を抱えて
ただ、それを繰り返して
1時間かけてマンションについた
「あ……鍵……」
マンションのエントランスが目の前に見えるのに
ここまで来て入れないなんて
もうスルギ、家にいるかな？
きっと、私の荷物だってスルギが持ってるはず
最初っからスルギの家に行けばよかった……
深い溜め息のあとに
また歩き出せば
ずかずかとこっちに向かってくる人影が見えた
こんな時間に、人もまばらの通りにー
瞬時に不安が過って
顔をあわせないようにうつむいた
「……っ」
向かってくる気配に
後退りした足が向きを変えて
走り出すはずだった足が縺れて
そのまま冷たいコンクリートに倒れるように
膝をついた
はずだったのに
私の膝は地面に触れる直前で
まるで時間が止まったみたいに浮いていて
倒れないように支えられた腕に
時間が巻き戻るみたいに
引き上げられた
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作者名：LINK | 作成日時：2017年12月23日 21時
