case BY case (ページ29)

今日:13 hit、昨日:0 hit、合計:43,783 hit

・ページ29

　
　

セフン side

「待って」

コートを羽織ながら、慌ててAを追いかけた

一歩外に出れば、その寒さに凍えそうになる

「セフン？」

ドアの開いたタクシーに乗り込もうとするAを

押し込むようにタクシーに乗せて

横に乗り込んだ

「ちょっと……」

「いいから」

年末のこの忙しい街並みに

じっと立ち止まったまま動かないタクシーなんて

営業妨害もいいところ

諦めたように目的地を告げたAは

ちょっと不機嫌になった

「Aを1人で行かせられるわけないだろ」

「1人でだって、全然平気だよっ」

「よく言うよ」

喧嘩になりそうな重い雰囲気に

Aに手を伸ばす

「な、なに？」

一瞬構えたAの首から下がった入館カードの紐を

人差し指でくいっとすくいあげた

「そんなんだから心配になるんだよ」

「これは……っ」

慌ててカードを外してくるくると紐を巻き取れば

赤くなったAがぎゅっとカードを握りしめた

「それに

Aが平気でも、俺は平気じゃない」

「……え？」

「俺がどれだけ心配してるか……Aにわかんの？」

「な、なに言って……」

「どんだけ鈍感だよ」

そう笑えば

トマトみたいに真っ赤になったAが

俺から顔を背けるように窓を見つめた

「俺に任せとけばいい」

そうAの頭を撫でれば

窓を見つめたままのAの体がぴくっと反応して

「……わかった……」

「ん、素直でよろしい」

その反応が可愛くて

笑みがこぼれた

　
　
　