右耳に愛を。２【菅原孝支】

第五十声 ページ20

菅原side




かっこいいところ見せるって言ったからには、１点くらいは入れないとな


２アウト、ランナー２塁


ピッチャーに視線を戻す




バットを持つ手に力がこもる

歯を食いしばって、ピッチャーの手から離れたボール目がけてフルスイング



バァンッ


鳴ったのはキャッチャーのミット




「くっそ…」



須田の泣きそうな顔を思い出す

あんなに思い詰めなくてもいいのに、須田が当ててくれたおかげでランナーは２塁に進めたのに



ルールを知らない須田は分かってないんだろうな



自分がチームに貢献していたことを





だから、俺がここで打って須田を笑顔にする




再びバットを構えて、ボールを待つ





「がんばってっっ!!」





その声と共に押し出されたバットにボールが当たる



カァンッ



今度はミットの音じゃない、気持ちよくバットに当たったボールは、よく晴れた空に飛んでいく

ホームランだ



「あっ…、やった…」

「すがぁわらぁぁぁぁ!!!!」



途端にクラスの奴らが体当たりしてきた


「おまっ、やらかしやがったな！？」

「くそっ、遅れて来たくせによ！」



わしゃわしゃと髪をかき混ぜられ、もみくちゃにされていると大地が言った



「ほらほら、スガは走ってこないといけないんだぞ」



正直助かった



「あぁ」


ホームに帰ってくると、須田がぽかんとした顔で固まっていた


思わず笑みが溢れる



目が合うと須田はたちまち涙目になり、顔を真っ赤にして笑いながら



「菅原くん、かっこよすぎるよ」



その言葉に思わず、俺も固まった

でも、照れる暇なく２度目のクラスの奴らの体当たり




がんばってよかった




思いも寄らないサービス、本当によかった





ニヤケが止まらなかった







ーー

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