青の紫陽花【赤葦京治】 (ページ10)

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「京治…、京治っ！」

私の手を引く京治の歩みはとても早く、私は小走りになっていた。

そして、京治は私が呼んでも止まってはくれないし、振り向きもしない。

「京治、早いよ。」

振り向かない京治は、何だか知らない人のように見えた。

見たことないくらい、険しい表情だった。

手を離したのは、家の前に着いてから。

小走りだった私は少し息が上がり、京治は整うのを待っていてくれた。

「俺は…、お嬢さんと会わない方が良いですか？」

分かっていて聞いているのだろうか。

「良いわけ…ないでしょう。意地悪しているの？」

「…してませんよ。ただ、不安になったんです。」

京治は私の目を捉えているようで、捉えていない。
見ているようで見ていない。

ただ、ぼんやりと見つめているようだ。

「なにを、不安に思うの。」

「お嬢さんが居なくなることです。」

思ったよりも京治は私の事、大切に想ってくれているのかもしれない。

「分かってはいるのですが、何時かお嬢さんが遠くに行ってしまう、そう思うと不安で堪らない。」

この言葉で、全てを持ってかれそうになった。

京治に触れて、その言葉の真偽を確かめたくなった。

固まったままの京治の頬に手を伸ばそうとして、その手は止まった。

「寒いですね、家に入りますか。」

いつもより少し弱気な笑顔に、さっきの言葉は本当なのだという事が分かった。

ーー