青の紫陽花【赤葦京治】 (ページ5)

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赤葦side

頼むからそんな目で見ないで。

布団に潜りどれだけ経っただろうか。

たまに、夜眠る前目を瞑ると良くない考えが充満する時がある。

例えば、その細い手首とか伏し目がちな大きな目、白い肌に映える血色の良い唇とか。

全部自分の物だったら良かったのに。
いっその事、その細い手首に力を入れて逃げてしまおうか。

そんな事をしたら、貴女はどんな顔するでしょうか？

何時もの様に、穏やかに笑うでしょうか。
それとも、悲しそうにするでしょうか。

「…いけない。」

目を開けると自室の天井が、どこまでも黒く見えた。

不思議なことに、目を開けてしまうと現実が波のように押し寄せてきて、今まで考えていた事が鳴りを潜める。

そんな事をしたら、父はどうなる？
『お前の家の息子は恥さらしだ』なんて後ろ指さされて、首を切られるに決まってる。

ふぅ、と溜息を漏らすと良くない考えも全て出ていった。

きっと。

こうやって、いつも自分を保つ。

でもないと、衝動のままに貴女を抱きしめて、力いっぱい抱きしめて、想いを吐いてしまうだろう。

優しく微笑む貴女が好きだ。
あまり高くない声が好きだ。
頭の良く回るところが好きだ。

これ以上、惚れさせないでくれ。

あとが辛くなる。

自分に言い聞かせて、いけない、いけないと思っても、目を瞑ると必ず貴女の姿が浮かびます。

もう手遅れとなった今、俺を余計に煽るのはその熱を持った貴女の目です。

ーー