青の紫陽花【赤葦京治】 (ページ13)

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耳元で短く息をつく音がする。

そして、かなり長い沈黙の後もう一度京治は息を吐いた。

「…あー、やってしまった。」

私を抱きしめた腕が言葉とは逆に強くなった。
本の匂いが強くなる。

「…何か言ってくださいよ、お嬢さん。」

「…なんて言えばいいのよ。」

もっとひょろっとしてると思っていた。
この人が運動しているところ、私は見たことない。でも、抱きしめた腕とか男の人だ。

「本当は、こんなつもり無かったんですよ。でも、あの人があんなに煽るから、意地でつい…。」

あの人、とは貴子さんのことだろう。

「別に言い訳を聞きたいわけではないわ。」

「すみません。」

謝って欲しいわけでもない。

「何故、こんな事しているの？」

「分かってらっしゃるでしょう？」

分かる。こういう事は好いた人に行う行為。
分かっているけど、京治の口から聞きたかった。

「さぁ？」

「…意地悪ですね。」

すると京治はまた、ふぅーと息を吐いて、私の肩に頭を預けた。
髪の毛が首に当たって擽ったい。

「お慕い申し上げております。お嬢さん。」

やけにかしこまった言葉が、胸にじんわりと染みてくる。

私も。と言いかけて止めた。

「ありがとう。」

京治にここまで敬語を使わせてしまっている身分が、また疎ましくてならなかった。

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