青の紫陽花【赤葦京治】 (ページ2)

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成り上がり華族の『松下家』。

成り上がりとは言え、華族。
所謂、貴族。

収入源は全国に支店がある呉服屋。
お偉いさんや、貴族達に愛される呉服屋。
モノが良くて、刺繍、色が美しい。値段もピンからキリまで。

「A、準備なさい。学校へ遅れますよ。」

「お母様、もう準備は終わるわ。」

返事を返して鏡に向き直ると、髪を結い上げた私が映る。

歳は16。今年の冬に、嫁ぐらしい。

周りの子達は段々と減り、嬉々とした表情で学校を辞めていく。
皆、どこかへと嫁いでいっているらしい。

良く知らない相手などと、結婚して何が楽しいのやら。

私は少し感性がずれているらしい。
周りの子達の喜びがいまいち理解出来なかった。

そもそも、私には好いた男性がいた。

静かに淡々と話す姿が好きで、大きな手で本を捲る姿が好きで、どこまでも黒い目が好きだった。

「私が平民であったなら。」

可能性があったかもしれない。

華族になどならず、そのまま細々と呉服屋を営んでれば良かったのに。

立ち上がると、鏡に大きな青の紫陽花模様の着物が映った。

私は青が好きだ。
藍色、瑠璃色、群青色、空色。

着物は好んで青を着る。

あの人も、私には青が似合う。そう言ってくれた。

だけれども、鏡に映る私の顔色は青のせいか、白く血の気が無いように見えた。

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