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「……な……ばな!…っおい!橘!」


『…へっ!あっすみません!なんですか!』


「何ぼーっとしてるん。ほらこれ、12番テーブル持っていって。」


『あぁすみません!了解です。』


キッチンの藤井先輩に急かされ、急いでできた料理を持っていった。


戻ると暇になったのか、ホールに顔を出してきた先輩に、


「珍しいな。悩み事でもあるん。」


と突っ込まれた。



まさかさっきの出来事が頭から離れなくてぼーっとしてたなんて言えず、


『すみません、何でもないです。』

と返した。


「ふーん。なんや、恋でもしたかと思った。顔ゆるんでたし。」


『え、本当ですか?』



「いや、嘘やけど。」



『なんですか、もう。ほら店長に怒られるから戻ってください!』



へーい、と言いながらキッチンの奥に戻った藤井先輩は、私より2つ年上の大学四年生。



あっ、浪人してるらしいから3つ年上か。


就活も終わり暇なのか、私が入る時は大抵いつもいる。



日本人とは思えないほどの顔の濃さ、そして世間的にいうイケメン。


キッチン担当なのにお客さんの中でファンがいるとの噂もある。



そんな見た目に反し、喋るとほわほわしててものすごく天然。

年上ながらちょっと可愛いななんて思ったりして。



(でも藤井先輩、変なところで鋭いんだよなぁ。

恋とかいうから焦っちゃった。


…ほんとに顔ゆるんでたわけじゃないよね?)



集中集中っ!これから忙しくなるんだからっ。

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作者名:冬華 | 作成日時:2019年8月14日 1時

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