.ホットカフェラテ.(黄) (ページ24)

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『………何しに、きたの。』

「何しにってもう、愛する娘の顔みるためよ～！！」

そんなこと嘘なのはわかっている。

本当に自分の子を愛しているならば、
小さい子供を残して男と遊びはしない。

『どうしてわかったの、ここ。住所だって教えてないのに。』

「優希さんに聞いたら教えてくれたわ。

もう、寂しかったんだからねお母さんっ！」

優希さんとは何番目かわからない父親の兄。
つまり血は繋がっていないが、
私にとっての叔父さんで、

実はこのアパートの管理責任者。

一応親戚だからということで、
少しだけ家賃を下げてもらっている借りがあった。

女の色目を使ってその優希さんにも近付いたか知らないけど、

本当に吐き気がする。

『帰って。話すことなんもない。』

「そんなひどいじゃない～！

今日お母さん泊まるとこないの。

泊めてくれないかしら？」

『ちょっ、うわっ酒臭っ』

腕を引っ張ってついてくるこの女を振り解こうとする。

『ちょっとやめてよ。

行くとこないならホテルでも満喫でも行けば？』

「お金ないのよ。Aちゃん貸して？」

『は？じゃあ男の家でも行けば。私だってお金ないし。』

玄関前で行われるやりとりに、さすがに近所の目が気になってきたとき、

「…でも、カフェに通う余裕はあるんでしょ？」

そう言われ、思わず固まってしまった。

「店の入り口で見たわよ。

結構仲良さそうじゃない、あの茶髪の店員と。」

『なんでっ…つけてたの？』

「たまたまよ、そんなにいいの？あのカフェ。

私も、あの店員に会いに行ってみようかしら。」

酔いながらも鋭い目つきでこちらを見つめてくるこの女が心底憎く感じる。

やっと自由になれたのに。

やっと自分の大事にしたい場所を見つけたのに。

あのカフェを、中間さんを巻き込むなんて絶対させない。

『…あの店には絶対近づかないで。

今日はお金渡すからお願いだから帰って。』

食費に使おうとおろしていたお札数枚を

財布から取り出して母親に押し付けた。

「ありがとAちゃん！

また来るからね～」

そう言って母親は姿を消した。

『……二度と来ないでっ』

自分の発した声は誰にも届くことなく、

静かに暗闇に消えた。