誰かこのトキメキを止めてくれ

予約済み/fkr ページ15

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「ふくちゃん、こっち」


ポンポンとベッドの自分の寝ている隣を叩く彼女。何故か彼女は俺のことを“ふくちゃん”と呼ぶ。これは小さい頃から変わらない。眠いからかなんなのか、どことなくふわふわとしている様子を見せる。はいはい、と隣へ潜ると、ふにゃりと緩むその顔が可愛い。


「珍しいじゃん、急にどうしたの？」

「ん〜、？伊沢さんの動画みてたらやって欲しくなった...」


自分で言っておいて恥ずかしくなったのか、尻すぼみになるその言葉。“伊沢さんの動画”とはあの寝た体制のままいろんなことについて話す例のアレだろう。


「やけに甘えるじゃん」

「...なんかふくちゃん意地悪」


ぷくっと頬を膨らませる彼女。ごめんごめん、と謝ると「いいから早く、」なんて引き寄せられてしまった。


「ふくちゃんはいつ私の旦那さんになってくれるの、？」

「Aが“ふくちゃん”って呼ばなくなったら、かな」

「だって、ふくちゃんはふくちゃんだし」

「結婚したらAもふくちゃんになるんだよ？」

「...そっか」


「じゃあ、けんちゃんにしよ」と言う彼女はやっぱり小さい頃から変わっていない。昔、恋愛なんて1ミリも分からないのにただ“好き”という気持ちだけで「おおきくなったらお嫁さんにしてね」「うん、ぜったい」なんて約束したことが懐かしい。恋愛を少しずつ分かってきた今、“彼女”という立場になった彼女はそれをずっと覚えていて、“その日”を待っているのだ。


「けんちゃん好きだよ、おやすみ、！」


なんて殺し文句を放ってくれたんだ。すぐ眠りについた彼女の手をとって、指を絡める。無意識なのかなんなのか、きゅっと握り返してくる彼女はとんでもない策士だ。


─


( いつ旦那さんにしてくれる？ )





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