「さよなら」なんて言わないで【男主】 (ページ22)

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憂鬱な日(7) ページ22

そんな彼の態度を見ていると、自然と胸の奥底からジリジリと熱いものが湧き上がってくる感覚を覚える。
　……こんな感覚、初めてだ。

今まで僕はきっと、こんな気持ちを与える側だったから、いざ自分がなってみると、心に溜まるもやもやと苛立ちでもの凄く気分が悪くなる。
そのせいか、つい昨日まで感じていた転生者の元いた世界へのあこがれも何もかも、どうでもよく思えた。
Aのせいや、全部。
…だから何よりも、Aは平然としてて、自分だけこんなになってるのが悔しかった。

……Aもこんなに苦しい思いを味わってくれれば良いのになあ

軽く頭を振る。あー！だめやだめや！僕らしくないで？ほんまに

そういえば、似た経験がある。
ふと昔のことを思い出した。

…今なら、あの彼女の気持ちが分かるかもしれない。

結構前の話になる。

僕が、この軍に入る前のことだ。

僕は、元々軍に入る予定はなかった。既に別の職についていたからだ。

だが、職に就いたからと言ってまともな人生を送っていた訳では無かった。
至る所で彼女を作っては遊んで暮らしていた。
あの頃はとても楽しかった。それは今でも思う。

だが、ある日の事だった。

その日は彼女のうちの一人と、人通りが少ない場所で待ち合わせてデートをする約束をしていた。

昔の僕は浮かれて待っていた。
だが、待っても待っても彼女が来る気配はなかった。
待ち合わせが22時で、ちょうど24時を回ろうとした時だった。
後ろの方で物音がし、振り向くとそこには黒い服を着た彼女が立っていた。
少し、違和感を覚えたが、僕は彼女の元に走り寄った。

彼女の肩に手を置いた、その時だった。

脇腹あたりに、尋常ではない痛さが走った。

それが、包丁だということに気づいた時は、もうそれは既に僕の体に入り込んでいた。

ぐら、と視界が揺れ、そして体全体に振動が伝わる。

ありったけの力を振り絞って声を出す。すると、彼女は鬱君のせいだからと残してその場を去ってしまった。

僕のせい…？
僕が、一体何をしたって言うんや…？

「流石に女を作りすぎたな、大先生よ」

…誰や…？

天使でも迎えに来たんかと思ったが、来たのはそれとはまるで正反対の悪魔のようなやつだった。

そしてその時僕を助けたのがグルちゃんで、ほんでそのまま彼の推薦でこの今いる軍で住み込みで働くこのになったという訳だ。