「さよなら」なんて言わないで【男主】 (ページ21)

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憂鬱な日(6) ページ21

「…だったら僕でも良かったんじゃあないですか？」

「……大先生お前、そんなに……奴らのことを気にかけていたんだな……」

グルちゃんは僕の事をとても感心した目で見る。
でもそれはただのフリだということを僕はよーく知っている。
こっちはマジで心配してるって言うのに……全くさ

ずっとそのような調子のグルちゃんに痺れを切らし、僕はがたんっ、と大きな音を立てて立ち上がった。

「あーもー今からでも変えれない？……あのー、転生者だけでもさ。ホラ、ゾムは戦闘中心じゃないすか～転生者には戦闘知識とか要らないんじゃない？」

そうヘラヘラ笑いながら、そうグルちゃんに願い出る。
転生者を決して侮辱した訳じゃないが、戦闘知識は身につけなくても良いのではないかと思っているのは本当である。

……頼むでほんま、そう小声で付け足し、グルちゃんの目を真っ直ぐ見つめる。

「……大先生…」

だが、それも虚しく目の前にパンパンに膨らんだ名簿を突き出され、グルちゃんに「お前はこっちな」と言われ、部屋を追い出されてしまった。

ー

『あ！鬱さん！』

　グルちゃんから渡された仕事を一通り済ませ、一服しようと外に出た瞬間、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。

　せっかく名前を呼んでもらえたのに、ちっとも嬉しくなんてなかった。

「…なに」

　少し声のトーンを落として声の持ち主の方も振り向かないまま、僕は返事を返した。

『鬱さん？どこか具合でも、』

　案の定後ろにいるAは僕の声を聞いて、かなり心配したみたいだった。…誰のせいやと思ってるん

「別になんもないよ。それよりどう？ゾムたちとは仲良くやってる？」

　語尾が少しだけ強くなってしまう。

　軽く皮肉を込めて言ったつもりだったが、彼にそれは全く効いていないようだった。

『あ！はい、コネシマさんとシャオロンさんはともかく、ゾムさんはとても優しいお方だと思います。』

「……はぁ？」

　彼の口からありえない言葉が飛び出てきて、思わず思いっきり後ろを振り返り、口を開けてしまう。

『昨日、危ないところに駆けつけてきてくれました』

　ゾムが転生者の危ない所に駆けつけた……？あの、敵味方問わず手にかけるゾムが？

　Aはそう言うと、照れくさそうに笑った。

僕は、そのAの顔を見て、途端に血の気が引いた。

……初めて見る表情。

その言動には嘘偽りの無いもののように見えた。