「さよなら」なんて言わないで【男主】 (ページ14)

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平凡な日(10) ページ14

「俺が……」

ゾムが僕に聞こえないくらいの声でなにか呟いた。僕はそれが何か気になり、顔を上げて彼の方を見る。
そこには目を細めたゾムがいた。これは恐らく何か良くないことを考えている表情だ。数年一緒に居て何を考えているのか大体分かるようになってきた。それを見ていると、何故だかほっとけずに、僕はつい尋ねてしまった。

『ゾム？』
「…ん、っんふ、なんでもない」

…今確実に笑ったよね
これは確実に良くないことを考えている。コネシマや大先生…いや、ロボロ辺りが危ない気がする。

そんな事を考えていると、少しだけ昔の事を思い出した。

ゾムはコネシマとシャオロンと、ついでに僕の戦闘面での教育係として総統直々に任命されていたらしい。

当時はまだ周りの僕への信頼もとても薄く…いや無いに等しかったな。

初日の打ち合わせの日、スパイと見間違えてしまった人達に捕まってしまった僕は、兎に角たこ殴りにされていた。そんなに僕ってスパイに見えます？その時はもう転職してスパイになろうかと思った。

途中で意識を失ってしまったものの、目を覚ますとそこはベッドの上で、すぐ横にはではゾムが僕の事をじっと見つめて座っていた。

僕は彼を見て一瞬で理解した。きっとあそこから彼が僕を助けてくれたのだ、と

あの時は捕まってあんな目に遭った直後だったので、周りが皆、僕の事を何処かで軽蔑しているのだと思い込んでしまっていた。

でも、ゾムだけは違った。彼はあの場所から助け出してくれた。

そして僕を同じ仲間として扱ってくれた。

僕はそれが何よりも嬉しかった。

だから、こうしてずっと僕の面倒を見てきてくれたゾムのためにも、もっと僕は強くならなくちゃいけないんだと思った。コネシマとシャオロンにはお前の体力じゃ無理やと言われたが、でも僕はどんな訓練だって乗り越えてみせる。

そう、一般人の壁を超えてみせる。

…だって、もしいつか急に元の世界に帰れるようになったりして、何も周りの人達やゾムにお返し出来ずに帰るなんてことになったら、それこそ一生の恥だ。

そして僕はまたゾムに向かってまた叫んだ。

『……体力作りしたいからほんとにそろそろ離せえええ！！』

ゾムがこれからきっとどんなことをしたって、僕は僕を救ってくれた彼のことを嫌いになるなんてことは絶対にないだろう。

平凡な日/zm 終