「さよなら」なんて言わないで【男主】 (ページ1)

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数年前の話(1) ページ1

目が覚めた時、僕は知らない場所に仰向けで倒れていた。

そこは人通りの少ない開けた道のど真ん中だった。

空はこれ程と言っていいほど快晴で、はなまる100点、素晴らしい天気だ。仰向けになっているから空がよく見える。時期的に春かな。

そのままの体勢で周りを見渡すと、レンガで造られた家がずらりと並んでいる。どう見てもいつもの街じゃない。

そこを歩く人々もコスプレでしか見た事のない、フリフリのついたドレスや、貴族が着ていそうなゴテゴテジャラジャラの服ばっかりを見に纏っている。

僕は中世にでもタイムスリップしてしまったのだろうか。

ゴシゴシと目を擦る。追加でまた擦る。

眠気はないし、意識もハッキリしている。

夢ではないみたいだ。

『はあ……どうしよ…』

もう何がなんだかわからない。

いや、ここが本来僕のいるべき場所じゃないことは分かってる。
うん、だって絶っっ対に違うもんね。僕馬車とか乗らないし。いや別に馬嫌いってわけじゃないよ。好きだよ。特にしっぽとか。

特別誰かと話しているわけじゃないのに、1人で頭の中で延々と語ってしまう。…寂しいのかな、僕

「そこのお前！そこで何をしている！」

やっぱりこれは一周、いや二周三周回って夢なんじゃないか？
そう考えてみればそうだ。大学で授業を受けてる最中、ついうたた寝してしまって、目を覚ましたらこんなよーわからん世界に居たって…転生モノじゃあるまいし。それにあれはれっきとしたフィクションだ。

「…お前、聞いてるのか？」

うん！そうだ！夢に違いない！もう一度寝よう！寝て起きれば、きっとあの部屋に戻れるだろう。

そうと決まれば二度寝だ！
のび○太くん程ではないけど寝るのには結構自信があるんだよね！

「お前……怪しいヤツだな…！まさか！」

太陽もいい感じに照ってるし、……最高のお昼寝タイムになりそうだ。

ゆっくりと目を閉じる。すると一気に脳が重くなっていくのを感じる。

眠気が、僕を襲う。

うん、なんだかいい夢を見れそうだ……

「お前、敵国のスパイだな？！」

何か声が聞こえた気がしたが、多分少し遠くで起こったちょっとした事件だろう。

睡眠欲に抗えなくなった僕はとうとう眠りについた。

そして目が覚めると、僕は手に大きな手枷を繋がれ、真っ暗な牢屋の中でまた仰向けになっていた。