【HQ!!】逆向きの下心。【及川徹】-完-

#25 ページ25

＊





及川「疲れたでしょ、ちょっと人少ないとこ行こっか」



『おおきに』





境内の奥にある本堂の横、




そこにある休憩用のベンチに腰掛ける。





人は少ないと言ってもベンチは残り1つしか空いてなかった。





『ラッキーやったな、座れて』



及川「そうだね」



『ふぅ〜、人多いなぁ』



及川「そうだね」





心臓の鼓動が速い。





なんで女の子1人にこんなに…。






『花火、始まってまうなぁ』



及川「俺と2人じゃ、嫌？」



『別に嫌やないけど、高校最後かもしれへんのにみんなで見たかったなぁって』



及川「……そうだね」





2人きりで良かった、って思って欲しかった。






及川「ねぇA？」



『ん？』



及川「俺今めっちゃドキドキしてる」



『え？』



及川「ほら」





俺はAの手を取って、自分の胸に当てる。





『ほ、ほんまや』



及川「はは、俺なんでこんなに余裕ないんだろ」



『上手く笑えてへんで？』



及川「カッコ悪いね」



『カッコええで？』





多分、





そうじゃない。






及川「俺、女の子と浴衣デート初めてなんだ」



『浴衣デート童貞奪ってもうたなぁ〜』





なんて笑うA。





及川「でもAに奪われるなら俺は全然いいけどね」



『そう言うてもろて嬉しいです』





なんでこうも上手く引っかかってくれないの？





俺の左側につかれた手に、触れたい。





触れても、いい？





手、繋いでも、いい？





ゆっくり、



そっと、





Aの手に自分の手を伸ばす。





あと本当に少しなのに、触れるのが怖い。





手が震えてるのが自分でもわかる。





『なぁ徹』



及川「ん？」





サッと手を戻す。





『卒業したら、どうするん？』



及川「俺は…」





Aと同じ大学行きたいなぁ、なんて。





及川「大学出て、その後は実業団とかでプロリーグ出れたらいいなぁって思ってるよ」



『さよか』



及川「……Aは？」





やっぱ関西戻るとか…？





『んー、うちも大学に行きたいな思てる』



及川「宮城の？」



『おん、この辺で』



及川「良かった、関西戻るのかと思った」



『戻らへんよ』





同じとこじゃないよね、さすがに。





『徹のバレー、まだ見たかったなぁ』





なにそれ、





ちょー嬉しいじゃん。





及川「じゃあさ…」





＊

#26→←#24

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す