重なる ページ20
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康二が話している途中、もう大丈夫と思ったのか「行くね。」と小声で阿部ちゃんが言った。
ふっかさんも手を振り出したので、私も「ありがとう。」と口パクして手を振った。
静かに二人は部屋を出て行った。
康二は大泣きしてるから全く気付いていない様子だった。
向井「お願いやから嫌いにならんといてなぁ〜〜。」
A「ならないよ。」
優しく頭をなでるとさらに泣き出す康二。
ほんとに子供をあやしているみたいで、ふふっと笑みがこぼれる。
すると康二がガバッと顔を上げた。
向井「やっと、やっと笑ってくれたぁ！！」
A「ん？さっきから笑ってるよ？」
向井「Aちゃんクールやから、わからんよぉ！！」
そうかなぁ？と思いながら首をかしげる。
向井「うわぁ！！待って！！肩びしょびしょやん！！」
A「うん、ずっと前からね。」
向井「俺のせいでほんまごめん！！」
今更ながら肩の濡れ具合に驚く康二にまた笑みがこぼれる。
康二越しに時計が目に映る。
時刻はいつの間にか24時を迎えようとしていた。
A「康二。」
向井「えぇっ！何！？」
A「違う。シー。」
少し静かにして欲しくてポーズを取る。
さっきから康二の声量で隣の部屋から苦情がこないかハラハラしていたのだ。
隣の部屋がメンバーならいいんだけど。
そう考えていたら康二の顔が近づいてきた。
「どうしたの？」と聞く前に唇と唇が触れる。
その唇はすぐに離れた。
向井「…Aちゃん、抵抗してくれな誤解してまうで？」
真剣な瞳で見つめられたと思ったら再び重なる唇。
驚きのあまり抵抗も忘れていたが、康二の舌が私の唇に触れた瞬間、無意識に体が抵抗した。
それを感じ取ったのか康二の体がゆっくり離れた。
向井「ごめん。でも、こうでもせえへんと俺の気持ち伝わらんと思ったから。」
康二の顔も耳も真っ赤で、決してお酒の勢いではないと言うことが伝わって来た。
向井「返事はいらへんから。…おやすみ。」
一方的に言葉を発した後、康二は静かに部屋を出て行った。
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作者名：迷子のフクロウ | 作成日時：2022年12月17日 20時
