11話 エースとセンター ＊ 黄 ページ1
・
・
・
「岩本くん、お話、良い、ですか？」
最高気温が28度を超える日が何度か続き、
本格的な夏を感じ始めたある日。
撮影のために切った髪と、いつぶりかの敬語が
俯くラウールを随分と幼くさせていた。
「どした？」
朝ごはんが終わり、新作のスイーツが出たんだと
舘さんに貰って食べていた時に来たラウール。
周りには佐久間と阿部がいて、
キッチンには康二と舘さん、
少し周りを見渡して黙るもんだから、
大事な話だと分かって、部屋においでと言う。
俺よりも大きくなってしまった背を、少し丸めて
大人しく着いてくるもんだから、また可愛い。
「みんなには言い難いの？」
静かに、頷いた。
水しかないんだけど、って出し、
そのコップに添えられる包帯はまだまだ痛々しい。
普通に歩けるようになったものの、
まだ走ることは出来ないし、無理もできない。
撮影も、少しづつ進めているとマネージャーから聞いた。
まだ俺達の間には、ほんの少し、距離がある。
それは仕方のないことだし、
乗り越えなきゃいけないものだと割り切って
それでも前に進もうとしていた。
ラウールが、俺らも、自分も
受け入れにくいっていうのはよく分かる。
自分だって素直にありがとうだなんてきっと言えない。
あんだけチンピラみたいな男に凄まれて、
迷惑だと怒鳴り散らされ、少し外を出歩いたら
事故に巻き込まれてしまったのだから、そりゃそう。
でも、康二が言った。
散歩ならいくらでも付き合うし、
迷惑だとか考えなくていい、って。
ふっかが言った。
メンバーなら迷惑掛けろと。
それはみんな同じ意見で、勿論そう。
だからこそ、今まで通り、少しづつ、少しづつ
できてしまった溝を埋めていっている。
「俺には、言えるの？」
そんな毎日の中で、急に。
ラウールから改まって話なんて、あの日以来。
SnowManを辞めると聞いたあの日以来だから、
変に構えてしまう。
そんなこと、ないよなって考えるけど
でもやっぱり、もし、なんてひよってしまって情けない。
最悪の想定をしてしまうのは許して欲しい。
最近結構その勘が当たってしまってるし、
結構よくないことも続いてしまっているのだから。
「どした？」
「僕を、センターから、外して、欲しい、です」
悪い予感こそ、当たるものだと思った。
心臓の音が耳まで聞こえてきそう。
ため息になるなと意識して、細く息を吐く。
「なんで？」
俺が出せた単語はこれだけだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 529人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みさ(プロフ) - yuuka9976さん» コメントありがとうございます！泣ける、と思ってのテッシュのご用意とても嬉しいです。まだ表現が上手く出来ずに悩んでいることもあるので、少しでも感情が動いた作品が作れているのであればとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします！ (2022年9月28日 13時) (
レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
yuuka9976(プロフ) - 泣ける作品ですね。。ティッシュ用意しなきゃみれなくりそうです。楽しみにしてますね！！ (2022年9月27日 7時) (レス) @page31 id: 14f1286f8c (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - ユキトさん» コメントありがとうございます！タオルやティッシュのご用意とっても嬉しいです！笑 誰かの心が少しでも動いてくれるような作品をかけて嬉しいです。まだまだ続きますが、ぜひ最後までタオルと共にお付き合いいただけると嬉しいです！よろしくお願いします！ (2022年9月15日 9時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 涙なしには読めないんでタオル用意しました←ティッシュ一箱使い切った人 (2022年9月14日 16時) (レス) id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 一気見しました。凄いラウの弱い部分に共感したと同時にメンバーの言葉に励まされた作品でした。応援してます！ (2022年9月14日 16時) (レス) @page5 id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みさ | 作成日時：2022年9月14日 1時
