それでも明日は ＊3＊

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「だから、俺は、ここで生きるんだよ」



カットの声が掛かると同時に、
思わず詰めていた息を吐き出す。
気が付けば俺は泣いていて、慌てて涙を拭うと
スタッフさんも泣いていることに気が付いた。

いっつも泣かされるんです、とはにかみ、
女優さんの元へと走っていく背中を追うと
不意にラウの目線とかち合う。



「あれ、ふっかさん」



あら、バレちゃった。



「放送終わってさ、気になって見に来たんだ」

「ふふ、なんか照れるな、見てたの？」

「うん、俺思わず泣いたよ」

「…ほんとだ、泣いてる」



頬に当てられた手は、酷く熱かった。
心なしか震えてる気もする。



「ラウ、お前、」

「大丈夫だよ、あともうちょっとなんだ。
それに、とっても調子がいいんだよ、ノッてる。
まだまだ、驚かすから、そこで見てて」



頭をぽんと叩き、また帰っていった。
監督に嬉しそうに、お兄ちゃんが来てるんです、
かっこいいところ見せなきゃって笑って。

見せてもらわなくても、見てたよ。

それに俺らは、いつだって驚かされてる。
いつだってカッコイイなって、思ってるよ、馬鹿。



ラウは、本当に見事に演じきった。


映画"幸せのカタチ"。
夢半ばで中途難聴になり、夢を諦めた主人公"ハル"。
周りの人達との出会いが、ハルを変えた。
そしてまた、ハルとの出会いが周りを変えた。

そんな物語を、見事演じきった。





「主人公 ハル役、ラウールさんクランクアップです！」



白色の花束と共に、クランクアップ。



「本当に、本当にありがとうございました。
沢山ご迷惑もお掛けしましたが、
皆さんの支えで僕はハルを演じることが出来ました。

台本を頂いてから、色々な葛藤もありましたが…
ハルを演じることが出来て、
皆さんと出会うことが出来て、本当によかったです。

僕はこれからも、ハルを演じることが出来たことを
誇りに思い、大切にしていきたいと思います。
そして、僕も、ハルと同じように
誰かの希望であり、勇気であり、
生きる明日になれるように頑張っていきます。

本当に、ありがとうございました！！」



静かな拍手と、ありがとうの手話に包まれ
ラウは静かに泣いた。

実はこの後、公開記念試写会にて
みんなのサプライズメッセージビデオが送られる。
そこで、やっぱりラウは泣いた。
そして、言った。

僕は、誰かの希望であり、勇気であり、
生きる明日になりたいと。
この作品に出会えて本当に良かったと。

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