それでも明日は ＊3＊

12話 両手広げて ＊紫 ページ12

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暦の上は、もう秋。
とはいうものの、まだまだ残暑が厳しい日々。
30度を延々と超え続ける日々に嫌気がさし、
バテ始めた頃、うちの子は盛大に体調を崩した。



「どうだった？」

「あかん、今日もずっとトイレと友達やったわ。
便座あったかいってそこで寝てたくらいやもん...
袋あるからベッド行こう言うても、全然。
水分こそ取れるけど、お粥ですらあかんかったわ」



映画の撮影も佳境に入り、
歌番組にも収録という形ではあるものの
少しづつ参加していた頃に、急に咳が出始めた。
ある日は頭痛、ある日は咳、ある日は耳鳴りと
少しずつ不調が重なり、続き始めた。

病院に行って、薬を貰って、
一時は落ち着くもののまたぶり返し繰り返す。

何度目かを重ねて頃から、
ラウが我慢というものを覚えてしまって
ついに先日YouTubeの撮影中に倒れた。
佐久間のボケにみんなでツッコんだが、
ラウだけ無反応で、声をかけると、慌てて
立ち上がったものの、そのまま倒れて大騒ぎになった。

照と舘さんの説教は割かしきっちりされたものの、
頑なに甘えてこないのがうちの子だった。


時折訪れる耳鳴りに、髪が引き千切れそうなくらいに
耳ごと握りしめて耐えるものだから
こっちはとんでもじゃないけど見てられない。
過呼吸にも何度もなって、胸が痛んだ。

1人にはしておけないからと、
オフのメンバー交代で様子を見るのだが
本当にずっとトイレで吐くのを耐えるか、
ベッドで静かに耳鳴りと耐久レースするかの
どっちかの報告しか聞かなくなってきた。

片耳が感音性難聴の場合、
結構よくある現象だと担当医の人から聞いた。
気圧の変化もあるのだろうと言われたが
この頃の不安定な天気を恨むしかないなんて理不尽だ。



「大丈夫や言うねんけど、大丈夫ちゃうねんなぁ...
明日も撮影らしいんよ、無理やって言うねんけど
行くしかないって言うからな？もうどうしよかと...」



確かにスケジュールは明日撮影だった。
何度か体調の都合で飛ばしているから、
明日こそは行かないとと思ってるのだろう。

分かる、わかるんだけど...



「歌とかも必死なんやけどさ...
もうほんま見てられへんくらい頑張ろうとするねん」

「あーあーあー...泣かなくていい、
泣かなくていいからな、な？こぉーじぃー」



わっと泣き始める康二を慰めにかかる。

耳鳴りがやんだふとしたときか、
やらなきゃとなにかに取りつかれたように
イヤホンをし始めた時は肝が冷えた。

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