(9) ページ10
・
・
・
慌てて息して。
「ラウール、大丈夫だよ、怖くないから。
耳、なんか変？阿部ちゃんの声聞こえるかな？
ん、聞こえてるなら、おっけ。
ラウール、ちゃんと息できてる、上手。
吸ってばっかだとしんどいから、吐いてみよっか。
心配しなくていいよ、上手に出来てるからね」
「佐久間、救急車呼んで。
翔太、舘さん、スタッフさん呼んできてくれる？
康二〜、泣かなくていいぞ、
めめと一緒に水買って、タオル持ってきてくれる？」
「俺、替えの上着かなんか持ってくるわ」
「あんがと」
ふっかさんが僕の手に重ねて、耳を塞いでくれる。
「なんか聞こえてんのかな？
変な音聞こえたら怖えよなぁ…」
「気持ち悪いなら、全部吐いちゃっていいよ。
袋もちゃんとあるからね、大丈夫だから」
阿部ちゃんに袋を広げられて、
堪らなくなってまた吐いた。
背中を強めにさすられて、何度か吐くと
胃の中は空っぽになったのか、少し落ち着く。
「目、閉じてな？」
ふっかさんが片方の手で俺の目を覆う。
チカチカがなくなって、強ばってた体が緩む。
「耳、抑えてるから、力抜いていいよ、な」
髪が抜ける勢いで掴んでた手を、
指からゆるゆると解かれて、だらりと垂れた。
サイレンは、まだ止まない。
ボリュームのツマミを、くるくると弄るように
大きくなったり小さくなったり波打った。
「俺、救急車迎えに行ってくる！」
少し目を開けると、ピンクの頭が遠くに行った。
阿部ちゃんは優しく笑ったまま、僕の涙を拭いて
大丈夫だと何度も繰り返したのがわかった。
康二くんのオレンジのタオルと、
めめの紺色のタオルが顔に押し付けられ、
ぐちゃぐちゃな僕の顔を拭う。
なんで、僕より、康二くんの方が、泣いてんの。
康二くんはもっと顔をクシャッとさせた。
岩本くんが汚れてしまった僕のシャツを脱がして、
ジップアップパーカーを下着の上に着せた。
汚れちゃう、と言いたい僕に気が付いたのか、
気にすんな、と岩本くんは笑った。
「ラウール？」
舘さんとしょっぴーがスタッフさんと、
佐久間くんが救急車の人と走ってくるのを見ると、
昨日の夜みたいに、また、フェードアウトした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 506人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みさ(プロフ) - yuuka9976さん» ありがとうございます！感情が動いてくださったことが嬉しいです。これからも頑張りますのでぜひ、よろしくお願いします！ (2022年8月26日 19時) (
レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - 名無し71262号さん» ありがとうございます！のんびりにはなってしまうかもしれませんが、頑張りますのでよろしくお願いします！ (2022年8月26日 19時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
yuuka9976(プロフ) - 続き楽しみにしてます。読んでいて涙が止まらなくなりました。 (2022年8月25日 11時) (レス) id: 14f1286f8c (このIDを非表示/違反報告)
名無し71262号(プロフ) - 続き楽しみにしています (2022年8月25日 10時) (レス) id: 2ea78d0701 (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - ラウールの脚さん» コメントありがとうございます！更新スペースはまちまちでお待たせすることもあるかもしれませんが、今後とも是非楽しんでいただけると幸いです！よろしくお願いします(*^^*) (2022年8月24日 23時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みさ | 作成日時：2022年8月23日 20時
