(10) ページ36
・
・
・
すすり泣く、声が聞こえた。
気が付けば会場は白の光でいっぱいで、
拍手も歓声もないのに、
沢山のお帰りの声で溢れかえってるような気がする。
「…ぁー…泣いちゃいそう」
「まだはえーよ」
「にゃはっ、そんな俺らも泣いちゃいそ！」
「えぇーっ、みんなが泣いちゃうの？
よしっ、じゃあ、今日はいつもと違うパフォーマンスや
曲をゆっくり楽しんでください。
1曲目、デビュー曲で D.D.」
初めての、オーケストラバージョン。
先輩に協力を仰いで、どうすれば1番辛くなく
パフォーマンスが出来るかを模索し続けた。
イヤモニを右耳に。
左耳は耳栓をして、さらにイヤーマフを。
ダンスは何度も何度も練習して体に染み込ませた。
ステージに細かくバミリをして、立ち位置を固定にした。
ちょっとのズレが致命傷にならないように、
できるだけ感覚を広く、それでも綺麗に見えるように
鏡の前で何度も何度も調整、修正し続けた。
1曲終われば、MCやユニットの曲を挟み、
連続することを避けた。
ちょっとした焦りが事故に繋がると、
曲やMCの合間は余裕を持たせ、
ステージ下の暗幕内はできるだけ明るくした。
僕は、本当に幸せものだね、とラウールが言った。
でも、みんなが優しいだけ、ではない。
今までお前が積み上げてきたものが、
今のこの形に繋がってるんだ、と思う。
そうして、4曲目が終わった時。
次は俺とめめと阿部ちゃんの出番だと、
佐久間と康二の漫才みたいなMCを聞きながら着替える。
横で会場を写すモニターを見ている
ラウールの顔がやけに青い。
祈るように下見たり、上見たり、息吐いたり。
「ラウール？」
3回、4回と呼びかけるも反応がなくて、
5回目で腕を引くと、本当に聞こえていないようだった。
「どした」
「わ、ぁ、次、3人だっけ？」
「おまえ大丈夫なの？」
「曲順なんだっけなって、思って、ぼーっとしてた」
「は？」
「あれ、ちが、う？」
会話がなんとなく噛み合わない。
MCの声から離れるように手を引くと、驚くほど冷たい。
「わかる？聞こえる？」
「あ、うん、ごめん、聞こえる」
「顔色悪い、どした？」
「そう、かな」
話してる内にもどんどん真っ青になっていくものだから、
どこか座れといい、辺りを見渡して、
またラウールに向き直ると、消えていた。
「ラウールッ…、＿＿＿＿っ、誰か！！！」
予報ハズレの春の雨。
大丈夫だと、思ってた。
現実を目の当たりにした、そんな日。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 506人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みさ(プロフ) - yuuka9976さん» ありがとうございます！感情が動いてくださったことが嬉しいです。これからも頑張りますのでぜひ、よろしくお願いします！ (2022年8月26日 19時) (
レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - 名無し71262号さん» ありがとうございます！のんびりにはなってしまうかもしれませんが、頑張りますのでよろしくお願いします！ (2022年8月26日 19時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
yuuka9976(プロフ) - 続き楽しみにしてます。読んでいて涙が止まらなくなりました。 (2022年8月25日 11時) (レス) id: 14f1286f8c (このIDを非表示/違反報告)
名無し71262号(プロフ) - 続き楽しみにしています (2022年8月25日 10時) (レス) id: 2ea78d0701 (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - ラウールの脚さん» コメントありがとうございます！更新スペースはまちまちでお待たせすることもあるかもしれませんが、今後とも是非楽しんでいただけると幸いです！よろしくお願いします(*^^*) (2022年8月24日 23時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みさ | 作成日時：2022年8月23日 20時
