重ならない世界の先で

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輝く、その裏側を知ることは無い。
でもそれでいいのかもしれない。
彼等は、沢山のものを私達に伝えてくれるのだから。
輝くものだけを見ていていいのかもしれない。




「せんせ、」

「ん？なぁに？」

「つよく、なれた」

「...強く？」


「うん、強くなれた。
先生が、いってくれたんだよ、つよくなれるって。
せんせが、先生がね、いてくれたから...
ぼくは、あんしんして、がんばれたんだよ」




そして、あの時もう無理だと泣いた彼が
大切だと抱きしめた彼等と共に笑っているのなら
私は、医者でよかったとそう思える。

取りこぼしたものは沢山あるけれど、
でも、救ったものも沢山あると、そう思えるんだ。
ありがとうって言葉を胸に、私は歩き続けたい。






私にはね、娘がいたんだ、それから大切な妻も。

娘はアイドルになるって言っていた。
毎日おもちゃのマイクを握って、休みの日には
小さなコンサートが家で開かれて。
フリフリの可愛いドレスを着て、よく遊んだよ。

最期の会話は、じゃあまた来週にね、だった。
娘はとっくに寝てしまっていてね、
ろくに話もせずに頭を撫でただけだった。



＿＿＿ …うん、そうだよ。
もう、20年ほど前になる震災でね。
2人は故郷に帰っていたんだ。

ああ、自分も死んでしまおうかって思った。


遺体はみつからなかった。
数え切れないほどの行方不明者と共に、
どこかに眠っているんだろうって話だった。

絶望の淵に立たされて。
辛くて、悲しくて。

でも、ずっと私の傍にいてくれた人がいた。
泣き続ける私の傍に、何も言わずに
ただ静かに寄り添ってくれる人がいたんだ。



ふふ、正解、君のお父さん。
考えられないって？彼はああ見えても優しいんだよ。
君は彼にそっくり、少し不器用なところも。


外の空気を吸いに行こうって、連れ出されて。
そしたら、そこで熱烈なハグを見たんだ。
今でも忘れないよ、凄く叫んでたから。

抱きしめられた方がね。

痛いってずっと言ってたけど、もう抱きしめてる方は
たまらなかったんだろうね。
素敵な再会だなって思うと同時に、少しだけ泣けたよ。


さめざめと泣く私に驚いたんだろうね、
2人共少し驚いて、気まずそうな顔で頭を下げてきた。
私も彼も気にしないで、と言ったんだけど。

彼等は私達の手を握って、大丈夫って言ったんだ。
そして、自分達は出てないけど先輩が出るからって
なぜかテレビ番組を勧められてね。

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