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なりたいみらい ページ3

枯れない花を目印にの世界で。



*Ryohei.A side...



テレビの音がどんどん大きくなるから、
慌てて少し音量を下げて顔を覗き込む。
丸い目は俺の姿を映さずに、ただ一心に目の前の
アイドルの姿を追っていた。



「ラウール」



出来るだけ優しく呼び掛けて、様子を伺う。
怖がらせたくはないから、そっと、静かに。



「…ん?」

「音、大きくない?」

「おと」


「これくらいで、見ようね」

「うん」



一旦勉強はやめて、並んで座る。
画面の向こう側は、少しだけ違った世界だった。



「手話だね」

「しゅわ?」

「音の無い言語。ろう者…ぁー…聞こえない人の言葉」

「おはなししてるの?」

「そうだよ」



めめも中途失聴者の役してたし、佐久間も手話の番組に
出ていて少し見てたから、ほんの少しだけわかる。
俺達と変わらない速さで会話することに驚き、
そして彼等がアイドルで、内1人は中途難聴者だと
いうことに、もっと驚いた。

音声言語のみで会話するのは難しく、
彼等は常に絶え間なく手を動かしていた。

俺達と同じ9人で、境遇もよく似ていた。
めめはドラマの関係で2度ほど会ったことがあるらしい。
『とってもあたたかい人達だった』と言ってた。
佐久間も会ったことがあって、その時は最年少の子に
手話を教えてもらったらしい。

聴こえない、それでも今までと同じように
アイドルとして歌い、踊り、笑っていた。



「なんだっけ、ハルの台詞」



確か映画に出ていた。
最初は賛否両論ある設定で、監督も主演の子も
叩かれていたけれど公開と同時に実力で捩じ伏せていた。
彼の紡ぐ言葉が、確かに多くの人の心に訴えかけた。



「誰かの、」

「ん?」


「誰かの…生きる明日に、なりたい」




思い出した。




『誰かの、希望でありたい。
誰かの、勇気になりたい。
誰かの、生きる明日になりたい。

俺は、俺自身を信じたいんだよ』




そんなセリフだった。



「よく、知ってたね」

「…ぼくも、そうなりたいなって」

「ラウールも?」

「うん」



1秒、1分、1時間、1日、1週間、1ヶ月、1年、一生。
重ねる毎に引き出しにしまわれてしまう記憶。
自分自身が生きていくだけで難しいのに、
それでもラウールは、誰かの為を想って
歩いていけるんだね。



「優しいね、あったかい」


「…んーん、ちがうよ」

「ん?なにが?」



「みんながね、教えてくれたから」




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そら(プロフ) - みささん» そうなんですね!こちらこそいつも素敵なお話ありがとうございます!!これからも頑張ってください! (11月4日 9時) (レス) @page5 id: 288b7a7513 (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - そらさん» コメントありがとうございます!いえ!男性の方であってますよ!僕や俺などの方もいますが、敢えて丁寧で中性的なイメージを持たせるために一人称を私にしています。なのでバッチリ正解です!いつも読んでくださってありがとうございます!これからも宜しくお願いします (11月3日 19時) (レス) id: 1fb25e0756 (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - あのお医者さんって女の方だったんですね!!恥ずかしながら今気づきました、、🤦🏻‍♀️ (11月3日 18時) (レス) @page5 id: 288b7a7513 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みさ | 作成日時:2023年10月30日 13時

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