深澤先輩と私【番外編】2

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ぎゅうってしたあと、軽く触れる程度のキスをしてくれて、辰哉くんの温もりに浸る暇もなく彼は行ってしまった。








空港って出会いの場だったり、再会の場だったり、別れの場だったり。
笑ってる人もいれば私みたいに泣いてる人もいて忙しい場所だ。






この時に初めて知ったけど、グッバイコーナーなんて場所もあってガラス越しに見送る人と旅立つ人の受話器がそれぞれあるから岩本さんに背中を押されてそこに立つと私たちの間に大きな分厚いガラスがあることにすでに涙が触れてくる。









もう触れることはできない、






「・・・たつやくん、」


深澤「大丈夫か？A」






目の前のガラスに手を当てる愛しい人






深澤「ははっ、泣かないって決めたのにね」






私が泣いてるからなのか、辰哉くんの切れ長の目から雫がツーーーと落ちて行く






「たつやくんも、泣いてるよ」






2人とも涙で顔が濡れてぐちゃぐちゃになっていて





ガラス越しに手を合わせても冷たいだけで辰哉くんの熱が伝わることはなく、どちらからともなくガラス越しに額を寄せてみても冷たいだけ。






こんなに近くにいるのに遠すぎて









深澤「会いたくなったらちゃんと言って。すぐ行くから。」








ーー





辰哉くんの顔が浮かぶと涙が溢れてくるのは寂しいし言葉ではうまく説明できない漠然とした不安があるから。




「・・・泣きたくないのになぁっ。」


向井「寂しいよなぁ。でも、ふっかさんと今まで2人でいたからこんな寂しい気持ちも経験できてるわけやん。2人が同じ時を共有して、いい時間過ごせてた証拠やん」


「・・・康二くんがいいこと言ってる」


向井「俺2人のことが好きやもん。2人でいてほしいなっていつでも思ってる。でも今はお互い別の場所でそれぞれ頑張ってかなあかんな。」





はにかんだ康二くんは私の頭に手を乗せてぽんぽんとしながら慰めてくれた。





康二くんがくれた言葉に救われたと思う。


同じ瞬間を感じてるから、2人で過ごす幸せな時間はいつも早く過ぎて行くんだなって思ったし、目が合うだけで笑顔になれるのは二人で過ごしてるから。







でもこんなに不安になるのは私たちに確かなものがないから、なのかな。








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