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どうして息が切れてるんだろう。
[外にいるの?]
深澤[んー?そーそー。ちょっと用事。]
辰哉くんの足音が電話越しにも聞こえてくる。そんなに急ぎのことなのか。
[・・・大変だね。]
深澤[もうすぐ家に着くよ。Aは?どこにいんの?]
家って、九州ではホテル暮らしのはずなのにそのワードに苦しくなる。
[今?こうえんっ、]
辰哉くんの家はここじゃないの?
なんか苦しくて喉の奥が熱くなってきた。
深澤[・・・そか。公園ね。わかった。]
瞬きしたら涙が溢れてきてしまって、今日はやっぱり星が余計にキラキラして見える。
深澤[ねぇ、さっきのLINE、]
[・・・うん、]
ガチャって音がする。辰哉くんは"家"に帰ったらしい。
深澤[はぁっ、さっきの。]
[・・・っ、]
今度は階段を駆ける音がする。ガチャって聞こえたりまた足音がしたり。向こうでも引っ張りだこなんだ、辰哉くんって。
物理的距離はもちろん遠い。でも心の距離も遠く感じてしまうよ。
深澤[ちょっと待って、ごめんごめん]
[大丈夫?]
深澤[や、急いでて。・・・]
辰哉くんの息が整うのを待つ間、なんだか冷たいものがはらはらと落ちてきた。
かじかむ手を宙に伸ばすと降り出した雪は手のひらに落ちては消えていく。
深澤[ねぇ。電話で言ってみて]
[やだよ、]
空港で言われた言葉を思い出す。
"会いたくなったらちゃんと言って。すぐ行くから"
深澤[いいから言ってみて]
辰哉くんの優しい声がダイレクトに届くとまるで近くにいるんじゃないかと錯覚してしまって、胸の鼓動が速くなる。
[・・・会いたい]
安心する声、いつもその声で私の名前を呼んで抱きしめてくれた日々が遠い。
[たつやくんにっ、会いたいよ]
返事は聞こえなかった。
「・・・っ!」
でもその代わりベンチに座っていた私の首元や背中に温もりを感じる。
私の冷たかった体は一瞬で暖かくなる。
ねぇ、知ってるよ、この匂い、温度。
?「ごめん。泣かせてごめん」
声が二重に聞こえる。
受話器越しの声と、本物の声。
その声は私が聞きたくてたまらなかった声で、彼の腕にぎゅっと包まれていて喉の奥が熱い。
顔を確認しなくてもわかるよ。
何度も泣いて枯れたはずの涙が嘘のようにまた出てきていた。
「・・・なん、で、
たつやくんっ、」
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廉桜(プロフ) - 2度目の完結、おめでとうございます!2度目の完結にあたり、もう一度初めから読ませていただきましたが、やっぱり胸キュン&ほんわかな癒され作品でとても幸せになれました!凄く大変だったと思います、本当にお疲れ様でした!! (2021年3月29日 2時) (レス) id: 1a19d45977 (このIDを非表示/違反報告)
廉桜(プロフ) - 美桜さん» わわっ、本当ですね…。私は読み手なので何度も楽しませていただけて嬉しいですが、美桜さんは書き手側なので、一度作り上げたものを1から始めるのは辛いですよね…。私がスクショしておけば良かったですね(泣)大変だとは思いますが、頑張って下さい!! (2021年2月14日 2時) (レス) id: 1a19d45977 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 廉桜さん» お話全部消えちゃいました(;_;)廉桜さんに最後まで読んでいただけてよかったです!2度と同じ話は書けないので、2度楽しめると思って是非もう1回読んでください* (2021年2月13日 20時) (レス) id: b889ac99cd (このIDを非表示/違反報告)
廉桜(プロフ) - 美桜さん» 完結、おめでとうございます。最後まで胸キュンな回でとても楽しく読ませていただきました!旦那も息子もオンナの心を掴むのが上手すぎて…笑将来あんな旦那を捕まえる事が出来たら幸せなんだろうなと思いながら読んでました!幸せになれる作品をありがとうございました (2021年1月31日 2時) (レス) id: 1a19d45977 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 廉桜さん» わかります!とってもほっこりします!土曜日で完結しますのでお暇な時にまた読みにきてください* (2021年1月28日 22時) (レス) id: b889ac99cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作成日時:2020年12月28日 21時