弱いもの同士 ページ33
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石鹸のいい香りがする。
『おかえり、たつやくん』
「…………ん、……………泣いた？」
頭をバスタオルでわしゃわしゃしながら節目がちな目でこっちをみてくる姿は色っぽくてどきどきして直視できない。
『んーん。泣いてない』
「ふはっ、泣いてないんだ。
そういえばA何歳になった？」
『21歳だよ』
じゃあ、と、差し出されたのは缶チューハイで
受け取るとふっと笑いながら「一杯付き合ってよ」なんて笑ってくる。
罪、本当に。
『私激弱だけどいい？』
「ふはっ、確かにめっちゃA弱そうだねぇ。でも俺もね、弱い」
弱いもの同士だねって笑って乾杯。
ベッドの淵に座って、たわいもない話をしながらお互いすぐに赤くなってそれをみて笑って。
穏やかな時間が流れていく。
就活の話やバイトの話を聞いてもらいながら、知りたくても確信をつけなかったたつやくんのことをお酒の力を借りながら少しずつ聞き出して。
『たつやくんのお仕事はどう？』
「んー忙しいね。明日も仕事だし、地方に出張に行くことも多い」
『出張？大変！1人で？』
「んーいや、、、チーム？で。」
『すごい、頑張ってるねたつやくん。』
楽しくて穏やかな時間が流れていた。
目が合うと笑ってみたり。
このまま時間が止まって欲しいと願うばかり。
「A。」
『ん？』
「やっぱ泣いたっしょ。」
雰囲気を明るくさせようとしてるのか
笑ってるけど全てを見透かしているような、
私のことわかってるような目をしてる。
「…言いにくい？理由、」
今だ、今だと思った。
『あのね、』
お酒の力を借りてこんなことを言うなんて私は本当に弱い。
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作者名：美桜
| 作成日時：2023年5月26日 12時
