【そうかもしれない】にさよならするとき ページ32
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予想外の言葉をもらって
江川のおばあちゃんちまで手を引かれて
いつもおばあちゃんちの2階で寝泊まりしているというたつやくんの部屋にたどり着いた。
「ここで待ってて？ちょっと風呂入ってくっから、」
なんだか見たことないぐらい優しい目をしたたつやくんはさっさと降りていってしまった。
今までおばあちゃんの家に来たことは何度もあるけど、この2階に上がってきたのは初めてで、たつやくんがいない間もおばあちゃんが掃除して綺麗に管理してたんだろうなと思うと胸が苦しくて痛くて。
このお布団も1人でせっせと干してる姿を最近も見たし、
私よりもたつやくんの帰りを待っていたのはおばあちゃんの方だ。
どうしておばあちゃんが辛い思いをしなきゃいけなかったんだろう。
こんなにたつやくんの帰りを待っていてくれて、
たつやくんの居場所を大切にしてくれて。
おばあちゃんがこの世からいなくなっちゃたらどうしようと不安で胸が押しつぶされそうになってしまう。
でもそれは誰にでも言えることであって、人間誰しも明日が必ずくるという保証なんてない。
忘れていたはずなのに、美桜ちゃんと飲んでた時の言葉がふっと脳裏によぎった。
【明日死んでもいいと思える1日を過ごしてるのか】
【とりあえず次会えた時にはもうその次がないと思って】
そうだよ。
私は間違いなくたつやくんに恋をしてるんだ、悲しいくらいに。
明日世界が終わるなら私は死んでも死にきれないと思う。
たつやくんが日頃から何をしてるか知らないけど
彼女がいるかどうかもわからないけど
伝えないといけないことが1つだけある。
伝えたところできっともう返事はわかりきっている。
だって、知り合って何年も経って【そうかもしれない】が沢山あったのに、1年に1回も会えるか会えないということはきっとそういうことだ。
自分のためにも、この進展のない沢山温め続けた気持ちにさよならしないといけない。
今年から大手企業に就職して町を離れたアヤちゃんにはいつか会えた時に私だけちょっと前に飛び出ちゃってごめんねって謝ればいい。
階段を登ってくる足音が近くなって
鼓動が早くなっていく。
「ただいまー。」
いつの間にか涙は止まっていて、その昂った気持ちのままたつやくんを捉えた。
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作者名：美桜
| 作成日時：2023年5月26日 12時
